- 2020.12.18
- インタビュー・対談
“日本警察史上最大の作戦”の全貌とは?
第二文藝部
『観月 KANGETSU』(麻生 幾)
ジャンル :
#小説
,#エンタメ・ミステリ
,#政治・経済・ビジネス
『外事警察』などで知られる麻生幾さんが、“日本警察史上最大の作戦”に取材して社会の「光と闇」を問うた圧巻の警察小説が誕生した。
大分県杵築市で毎年行われる幻想的な光に包まれる「観月祭」。今年も無事に迎えられるはずだった。しかし、祭りの一週間前、突如として七海を怪しい影が襲う。その翌日には七海が幼いころからお世話になっているパン屋の奥さんが絞殺体で発見された。さらには、この事件と時を同じくして東京で発見された首なし死体の関連が取りざたされ……。一見関係のない事件は、やがて巨大な闇を暴き出し始める。
表に出ることのない“現場”の密やかな努力
――この物語が生まれたきっかけ、大分県杵築市を舞台に選んだ理由を教えてください。
これまでハードな小説を多く書いてきましたが、今回は昔からずっと想いの底にあった「絵画的」な小説にしたかったのです。そのときに思い浮かんだのが、小さい頃に見た祭での屋台や揺れる光の向こうにある漆黒の闇です。
光と闇というのは私の中で一貫して描いてきたテーマでもありました。私が描く「闇」は政治の汚職や権力闘争のようなものではなく、もっと奥深いところにある闇なのです。ネタバレになるので詳しくは言えませんが、日本の警察史上最大の作戦に従事した、決して表舞台には出てこない方々に思いを馳せながら物語を紡ぎました。
昨年の晩秋、杵築市を訪れる機会に恵まれました。観月祭の行灯の中の揺れる灯りを見るうちに、まさに私が描こうとする「光と闇」がそこにあると確信して舞台にさせてもらいました。
――本作では舞台となった杵築の街並み、また人々の暮らしが鮮やかに立ち上がってきます。コロナ禍でしたが、取材は苦労されたのではないですか。
昨年の晩秋の取材に続き、本当は今年の3月にも杵築市にお邪魔したかったのですが、コロナウイルスの蔓延によって断念せざるを得ませんでした。しかし、観光協会の方が街並みや方言を含め熱心に協力してくださって、そのやりとりはメールや電話で数十回にも及びました。杵築の方のご支援なくしてこの小説は書き上げられませんでした。
――コロナの話題が出ましたが、「日本の危機管理」をテーマに書かれてきた麻生さんが、現在の状況で気になることはあるでしょうか。
行政では「なんとかなるんじゃないのか?」という空気が蔓延していて、その皺寄せが医療従事者に向かっている。国の政策というよりは民間人の、現場の努力で埋め合わせている事例が至るところにある。私はそういった、決して表に出ることはない“現場”の密やかな努力が常に私の小説のテーマにもなっています。
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