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コロナショックは日本企業の分水嶺

コロナショックは日本企業の分水嶺

伊丹 敬之

『日本企業の復活力』(伊丹 敬之)

出典 : #文春新書
ジャンル : #政治・経済・ビジネス

『日本企業の復活力』(伊丹 敬之)

バブル崩壊>コロナショック>オイルショック>リーマンショック

 この項の小見出しにした四つの経済危機が、戦後の日本を襲った大きなショックである。不等号は、経済危機の大きさを示している。

 この中で、コロナショックはバブル崩壊に次ぐ深刻さだと私は考える。

 バブル崩壊は日本国内に震源をもち、そのインパクトは日本だけに及んだ国内型ショックである。そして、国内でのマグマ爆発だったがゆえに、日本企業にあたえた傷は大きく深く、かつ長く続いた。だから、戦後最大の経済危機となり「失われた20年」と揶揄される長期低迷をもたらしてしまった。この点については、第7章で改めて触れることになるだろう。

 バブル崩壊以外の三つは、世界のすべての国を巻き込んだ世界的な規模のショックである。日本企業も外国の企業も、いわば似たような土俵で相撲をとらされた。だからこそ、日本企業が覚悟を持って思い切った対応ができるかが試されたともいえる。

 1970年代のオイルショックへの日本企業の見事な対応については、第1章で解説することにしたい。2回にわたるオイルショック(第一次が1973年、第二次が1979年)で、じつは日本企業の国際的地位(欧米企業との相対的地位)が上がるという結果になった。日本企業の大きな努力があったからである。

 結果論からいうわけではないが、世界的な危機の本質として、オイルショックはコロナショックよりもマイナスインパクトが小さくて済む性質のものだったと考える。その理由としては、対策の本質的なシンプルさと、危機が起きたときの世界と日本の成長ポテンシャルの大きさがあげられるだろう。

 もちろんオイルショックという、原油価格が6年ほどの間に20倍近くにはね上がった危機は、石油がどこの国の経済活動にも必須のものであるだけに深刻だった。しかし、これを克服する対策はシンプルで、個々の企業レベルで言えば石油の節約であり、世界全体で見れば、原油価格の急上昇で産油国に集まってしまった巨大な資金を世界的に還流させる道をつくることであった。カネは動き続けてこそ、経済価値を生み出すのである。

 このうち企業レベルの対策は、値段が急騰した資源の使用量を減らすことで、第1章でくわしくみるように、日本の産業はこれを見事にやってのけた。世界レベルの対策は、世界的な経済循環を停滞させることなくカネを動かし続けることで、産油国から先進国への資金還流の道をつくることであった。

文春新書
日本企業の復活力
コロナショックを超えて
伊丹敬之

定価:1,045円(税込)発売日:2021年01月20日

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