朝比奈あすかさんの最新作は、ノンストップの学園群像劇!
担当編集者が作品の魅力をお伝えします!
(放送はこちら)
https://voicy.jp/channel/1101/104636
組体操「人間タワー」をめぐるそれぞれの思惑。予想もしない、胸を打つラストとは!?
――それでは今日の一冊、朝比奈あすかさんの『人間タワー』に ついて、担当者の児玉藍さんにお話を伺いたいと思います。児玉さん、まずは作品の紹介をお願いします。
児玉:桜丘小学校という学校を舞台にした群像小説です。桜丘小学校ではこれまで毎年、運動会で6年生全員が「人間タワー」という組体操に挑んできました。ところが去年は頂上に立つ児童が滑り落ち、中段の児童が骨折。その危険性がメディアを賑わせたこともあり、「今年は中止にした方がよいのでは?」という声が児童や保護者からあがります。そんな中で強硬なタワー推進派である学年主任の珠愛月(じゅえる)先生やタワーに憧れ唯一自分が活躍できる場だと張り切るお調子者の出畑くん、冷めた目でタワーの反対を主張する文武両道な男子の青木くん、珠愛月先生とも青木くんとも違う形で、誰もが納得する道を探ろうとしている女子児童・澪さん……その他教師、児童、親、様々な人物の思いが渦巻きながら、胸を打つクライマックスへと向かっていきます。
――ありがとうございます。幾何学的に複数の接地点から描かれていますね。
児玉:なにしろ登場人物の数が多いのですが、それぞれの人物像や思惑の書き分けがとても巧みで、話の構成自体がタワーの成り立ちのようにとても緻密で強度があるんです。
――これまでvoicyで紹介してきた文春文庫はミステリーなどが多かったですが、この本の読後感は違いそうですね。そのあたりについて聞かせてください。
児玉:はじまりはざらっとした手触りがあって不穏なムードが漂っているのですが、きわめて清々しい読後感です。朝比奈さんは今回の『人間タワー』に限らず、常々社会的な問題への目線が鋭いかたですし、人のズルさや弱さを見逃さずに丹念に描かれるので、読んでいてふだん自分が蓋をしている悪い面やイヤな面をあぶりだされてしまうようなきつさを味わうこともあるのですが、読者に絶望感を抱かせたまま置いてきぼりにはしない。最終的には救いを感じさせてくれるんです。
――爽快さを失わないところが小説の魅力というようなことも紹介文にありますね。ここで、著者の朝比奈あすかさんについても簡単にご紹介いただけますか?
児玉:朝比奈さんは実は元々、大おばさまの戦争体験を記録したノンフィクションを発表されて文筆家としてデビューされました。
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