その最大の特徴は「権力の集中化」だ。文在寅政権と与党は、二〇年間の政権維持を目的とする「二〇年政権構想」のもとに、国家体制づくりに精力的に取り組んでいる。
もともと韓国の大統領は、日本の首相とはとても比較にならない強大な権限をもっている。その一つが、政府・軍・官公庁・政府系企業など約一万人についての人事権である。いくら一万人の人事権があるとはいっても、できる限り独裁化を避ける意味からも、これまでそれをフルに行使する大統領はいなかった。が、文在寅大統領はほとんど最大限にその強大な権力を行使しているといってよい。
大統領府が全面的に国政を主導できるように、国防部にせよ外交部にせよ法務部にせよ、主要官庁の官僚幹部をみな親政権の人物にすげ替えた。また、主な政府機関の局長以上には、親政権左派政治活動家を送り込み、思い通りに行政をコントロールしている。
その人事改造では、国家情報院、検察、警察、国防部などの安全保障・治安を担う権力機関の「改革」と称し、親政権左派系の人物を送り込み、大規模な人事異動を行なってきた。さらに人事への介入は司法の領域にも及んでいる。憲法裁判所、大法院ともに、保守系裁判官は排除され、文在寅大統領が任命した裁判官に入れ替えられている。
そのなかで主な標的とされたのが、強い権限を有してきた検察と、「保守勢力」だった。後に詳しく述べるが、盧武鉉政権の一員だった文在寅は、盧大統領が、失脚後に、検察の追及によって自殺したことを忘れていない。だから、検察を政権のコントロール下に置くのは、文政権の必須課題だった。それが一連の「検察改革」の実態である。
そして、もうひとつ敵視されているのが「保守勢力」であり、政権は彼らの壊滅を「国家のなすべき正義」として推し進めている。
文在寅政権の政治的な特異性として、反日政策が国内の「政敵潰し」に重要な役割を果たしていることが挙げられる。どういうことかというと、国内保守派に「親日派」のレッテルを貼り、「日本の手先だ」「売国奴だ」と糾弾し社会から排除していく政策を、幅広く展開しているのである。その狙いは、保守勢力を壊滅させ、独裁政権化をより確かなものにすることにある。
文在寅政権では、反日は対日本外交の最も有効な手段としてだけではなく、政敵潰し・独裁化への手段として積極的に活用されているのである。
文在寅は大統領就任前に、「日本の朝鮮統治を肯定するなど、歴史を歪曲した者を処罰する法律」の必要性を主張していた。これを受けた形で、与党議員から「歴史歪曲禁止法案」が国会に提出された(二〇二〇年八月一日)。また、ある従北民族主義団体は、「親日賛美禁止法」なる法律の制定を目指して活動している。