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結婚を控えた男のもとへ届いた脅迫状――『花束は毒』(織守きょうや)

結婚を控えた男のもとへ届いた脅迫状――『花束は毒』(織守きょうや)

「オール讀物」編集部

Book Talk/最新作を語る

出典 : #オール讀物
ジャンル : #エンタメ・ミステリ

脅迫状が導くラストシーンに震える
『花束は毒』(織守 きょうや)

 ホラーや怪談で人気の著者が、「今回はミステリーに振り切ってみました」と言う意欲作。

 大学生の木瀬芳樹は、かつての家庭教師・真壁研一と偶然再会する。当時は医学部生だった真壁だが、今はインテリアショップで働いているという。結婚を控えた彼の元に脅迫状が届いていると知った木瀬は、中学の先輩である探偵の北見理花に調査を依頼する。だが真壁本人はなぜか犯人追及に消極的だ。北見の職業探偵らしい地道な調査が、やがて予想外の展開に。

「真相を思いついたとき『これは絶対驚いてもらえる!』と興奮したのですが、どういう視点や構成が一番効果的か、かなり試行錯誤したんです。ひとまず北見がどんな人物かを提示しておくつもりで書き始めた序章で、木瀬の反応をメインにしたほうが探偵役と関わることによる彼自身の変化や成長も描けるな、と気づいたときに小説の全体像が見えてきました」

 序章では木瀬と北見の中学時代の出会いが語られる。探偵見習いを自称する北見に、木瀬は従兄へのいじめをやめさせるよう依頼するが、彼女がもたらした解決は木瀬に“正しいこととは何か?”という苦い問いを残した。

 大人になった今度こそ違う結果、正しい解決に辿り着きたいとの思いを胸に、木瀬は北見の調査に同行する。そして、ある選択を迫られるが……。

「この選択については“自分の中ではこっち”という答えが決まっていたのですが、いざ書き上げたらどちらを選ぶべきか揺らいでしまって。刊行後もまだ結論が出ないなんて初めてです。でも、この選択がインパクトを残すという感想を沢山いただくので、今作については自分でも迷うくらいのラストで良かったのかなと思います」

 織守さんは弁護士でもあり、探偵の調査手段として合法な範囲や、作中のような事件が起きたらどんな状況になるかなど、細部まで実際の法律知識に裏打ちされている。平凡な結婚をめぐる一見地味な物語が、そのリアルさゆえにじわじわ恐怖を帯びていく。

「こういう事が起こり得るか否か、を判断するのに知識は役立っています。誤った土台の上に作り上げてしまうのを避けられますし、逆に、法律上無理だけど小説なら設定次第では成立させられるかも、なんて考え方もします。日本ではダメだけど海外の法律なら、とか。読者としては、現実そっちのけで大見得をきるようなミステリーも大好きなんですが、作者としての私は驚きと納得をセットにしたいタイプ。理想は、結末を知って読んでも面白いミステリーを書けることですね」


おりがみきょうや 一九八〇年ロンドン生まれ。二〇一二年『霊感検定』で講談社BOX新人賞を受賞しデビュー。『記憶屋』シリーズが累計六十万部突破、映画化でも話題に。


(「オール讀物」9・10月合併号より)

 

花束は毒
織守きょうや

定価:1,870円(税込)発売日:2021年07月28日

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