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窪美澄さん『夜に星を放つ』第167回直木賞受賞インタビュー

窪美澄さん『夜に星を放つ』第167回直木賞受賞インタビュー


ジャンル : #エンタメ・ミステリ

短編は長編よりも難しいのではないかと

――デビュー作『ふがいない僕は空を見た』も短編集でしたが、今回の直木賞受賞作も短編集ですね。

 短編で短いから楽ということは全くなく、使うエネルギーは長編、短編で変わりません。原稿用紙50枚ほどの文量で書くというのは、頭を使う作業です。長編よりも難しいのではないかと、年々思うようになりました。

――受賞作の中で特にお気に入りの作品を教えてください。

 4作目に収録されている「湿りの海」という作品について、読者の方との交流会で「わたし、この主人公が大っ嫌いです」と言われて。すごくショックだったのですが(笑)、若い女性からしたらずるい男性を書いていたのだなと思いました。書いた後に、登場人物がどういう人かわかるということがあるのですが、今回は「嫌な男性を書いたのだな」とずしんと来ました。

――今回の直木賞受賞は作家としての節目になるのでしょうか。

 デビューが44歳と遅咲きで、残された時間がほかの作家さんよりも短いんですね。残された時間でいかに良質な作品を残すかということが課題だと思っておりますので、直木賞を頂いて、賞に恥ずかしくないような作品を次々と書いていきたいと思っています。

窪美澄さん

――直木賞受賞を経て、ご自身の作品への気持ちが変わった部分はありますか。

 ほかの候補作は拝読してはいないのですが……みなさん力作というのが伝わってくるので、怖くて読めないんです。どの作品がとってもおかしくなかったんじゃないかと思っていて、でも私が賞をいただいて、ごめんなさいという気持ちもあります。そして選んでくださってありがとうございましたという気持ちです。

――今回、選考結果を待っている間の心境は、過去、候補になった2回と比べてどうでしたか。

 今回は担当さんと一対一で待っていたんですね。私はすごいせっかちなので、とにかく早く終わってほしいという気持ちだけでした。だいたい今ぐらいの時間なんじゃないかと仰っていたんですけど、ちょっとトイレ行ってきていいですか、とかとにかく多動の癖があるので、落ち着きがなくて、苦痛を感じる時間でした。

――受賞のお電話はご自身で受けられたということですが、その瞬間のお気持ちは?

 やっと終わったという感じです(笑)。この苦痛の時間が、やっと終わったと思いました。

――デビューから今までの自分があっという間だったとおっしゃっていましたが、受賞した今、思い返して別の感想があれば教えてください。

 ちょっと、私の人生は変わっているなと思いますね。44歳でデビューして、昔の作家だったら、死んでるくらいの年齢なんですけど、そこから蘇って、小説家というものになることができて、あまり神様とか信じてないんですけど、もし神様みたいな人がいるとしたら、なかなか粋な人がいるじゃん、と言いたいです。

――さきほどR-18文学賞の話がありましたが、今回は選考委員から高校生と年上の女性との関係を、性的な部分を排除して書いたのではないかという指摘がありました。今回の短編集で、性的なものを描かれていないのは、何か時代の流れみたいなものが創作に反映されているのでしょうか。

 最初の頃は、「性」をテーマにした文学賞でデビューしたので、官能小説の依頼をすごくたくさんをいただきました。一生懸命書いていました。ただ、私は放っておくと、そんなに性的なシーンははいってこないんですね。確かに、性は書きたいテーマではあるんですけど、自然に、自分の書きたいものを書いていくと、そんなに激しいセクシャルなシーンはない感じがあって、それは私の人間的なものがあります。

また、子供もすごく大きいので、それがすごく恥ずかしいという。今になってみると、何を言っているんだという感じですが、それが恥ずかしいという気持ちが、今更ながら出てきました。

――最初の頃は出身の文学賞の特色からして、性を扱うことがある種の使命という思いもあったのでしょうか。

 それはありました。テーマのなかにかならず「りっしんべん」の性が入っていましたし、たくさん書かなければいけなかったのですが、それは小説家として、越えなければならないんだなと思いながら仕事していました。

――今は女性の官能作家のかたも増えて、そういうことを扱う方も増えていると思うんですけど、そういったところで、メリットはあったんでしょうか。

 あったと思います。自由になんでも書いていいとおっしゃる方が増えたので、自由に、私の翼を広げて書けるようになったと思います。

単行本
夜に星を放つ
窪美澄

定価:1,540円(税込)発売日:2022年05月24日

電子書籍
夜に星を放つ
窪美澄

発売日:2022年05月24日

文春文庫
さよなら、ニルヴァーナ
窪美澄

定価:880円(税込)発売日:2018年05月10日

電子書籍
さよなら、ニルヴァーナ
窪 美澄

発売日:2018年05月10日

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  • 『神域』真山仁・著 

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