いろんな違う家族の形を書いてきた
――今回コロナを扱った小説がありますが、人間関係にコロナが影響したとご自身が実感されることはございましたか。
窪 コロナ禍で、歳下の友人たちが、すごい婚活アプリにハマっていたんですよ。私自身はしたことがないんですけど。コロナだからこそ、みんな淋しくて、そういうことを求めているのかなと思って、ちょっとこれは書いておきたいなと思っていた部分があります。
――家族の関係が多様になっているなかで、窪さんはデビュー以来ずっと家族の関係性、個人の人間としての生き方を描かれてきました。家族をテーマに何作も書かれてきて、ご自身の家族との関係や考えに変化はありましたか。
窪 家族は、すごく大きなテーマで、私が生まれ育った家庭も離婚家庭でしたし、私もシングルマザーになったので、世間的にいま国が言うような正しい家族ではなかったんですね。だから、正しい家族は両親が揃って、子供が二人いる、異性愛同士の家庭ですと言われるとすごく違和感があるんです。それに、違うぞという思いがあって、たぶんいろんな違う家庭の形を書いてきたんだと思います。
――そういうものを書くことで私生活を浸食されないように気を付けていることはありますか。
窪 仕事のルーティンがしっかり決まっていて、昼型なんですね。小説を書く以外の時間は、小説からは離れようと自分で決めてスケジュールを立てています。書いている小説に自分が悩まされたりとか、苦しめられたりということは、昔はありましたが、今はあまりないですね。
――質疑を受けて、あらためて最後にひと言お願いします。
窪 書店さんが次々にお店をたたんでいたりして、みんな本を読まなくなっているんですよね。私自身もそうだし、どうしても小説を読んでいるよりも、違うエンタメ、たとえばネトフリとかTikTokとかYouTubeとかニコ生とか、見たくなるのもすごくわかるんです。でも、小説にしか解決できない心の穴というか、閉じることのできない心の穴というのが誰しもあるんじゃないかと思っています。
そういう小説を書いていきたいですし、私の小説もそうなんですが、いま、日本の小説はすごくいろんなテーマでいろんなことが書かれているので、なにか、心に迷いがあるときは、ちょっと近所の本屋さんにいって、一冊読んでみようかなと、文庫本でもなんでもいいと思いますので、読んでみてはいかがでしょうか、と皆さんにお願いしたいです。よろしくお願いします。
▶▶▶窪美澄さんの喜びの声
窪美澄(くぼ・みすみ)
1965年東京都生まれ。2009年「ミクマリ」で女による女のためのR−18文学賞大賞を受賞しデビュー。11年同作を収録した『ふがいない僕は空を見た』で山本周五郎賞受賞。12年『晴天の迷いクジラ』で山田風太郎賞、19年『トリニティ』で織田作之助賞を受賞 そのほか『さよなら、ニルヴァーナ』『よるのふくらみ』『やめるときも、すこやかなるときも』『じっと手を見る』『私は女になりたい』『朔が満ちる』など著書多数。
※なお、第167回直木賞の選考委員選評、受賞のことば、自伝エッセイ、グラビアなどを掲載した「オール讀物」9・10月合併号は、8月22日に発売予定です。
写真:深野未季(文藝春秋写真部)
メイク:TOMOMI・小池康友(K.e.y.)
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