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「あの男前のヴォーカルが、完全なる変態に…」King Gnu・井口理が『白日』で見せた、目を疑うほどの“変貌”とは?

「あの男前のヴォーカルが、完全なる変態に…」King Gnu・井口理が『白日』で見せた、目を疑うほどの“変貌”とは?

高橋 弘希

「文學界」大好評連載! 近現代音楽史概論B 出張編・King Gnu

出典 : #文春オンライン
ジャンル : #小説

 ――これは売れる。

King Gnuのヴォーカル・井口理(右から2人目)©産経新聞社

 実際その後、King Gnuは「白日」にて大ブレイクしたことを知り、自身の見る目に狂いはなかったと満足した訳だが、数か月後、偶然にもCDTVで彼らを観て愕然とする。テレビを点けると、ちょうど彼らのスタジオライヴ中で、演奏曲はすでにアウトロに入っており、ヴォーカルの立ち位置では、髭面眼鏡に半袖短パン姿の、謎の珍奇なる男が、謎の珍妙なる踊りを披露しており、その姿はどう好意的に見ても完全なる変態である。この変態は、いったい何奴――。

 

“完全なる変態”の正体は…

 そして演奏終了と共に理解する。なんということだろう、あの男前のヴォーカルは、おそらくは事務所の方針で解雇されたのだ。インディーからメジャーへ移籍するさいに、音楽的な理由でメンバーが代わる、これは間々ある話だ。しかしあのヴォーカルを解雇する理由は、まるで見当たらない。私は混乱した。果たして彼らにいったい何があったのか。

 そして後日、「Vinyl」のMVに出演していた彼と、あの完全なる変態が同一人物であると知り、私の頭は更に混乱する。この2年半ほどの間に彼にいったい何があったのだろうか、現代の音楽業界はあの好青年を完全なる変態にまで貶めてしまう魑魅魍魎の跋扈する異界なのだろうか――、そして彼が完全なる変態と化して以後も、その歌唱力は衰えるどころか益々の艶を帯びており、変態が美しい声で唄うという現状に私の脳内は更なる混迷を極めていくのだった。これはもう彼らのライヴに赴いて、その全貌を目の当たりにするしかない。

 そんな折、ロック・イン・ジャパン・フェス2022に、King Gnuが出演することを知る。しかも今年のロッキンには、連載本編でも取り上げたバンプにナンバガ、親交のある尾崎君のクリープハイプ、そしてかつて心酔したももクロまで登場するではないか――、問題は高額なチケット代の捻出である。私は我が顧問敏腕税理士の御手洗に連絡をした。

単行本
音楽が鳴りやんだら
高橋弘希

定価:2,090円(税込)発売日:2022年08月09日

電子書籍
音楽が鳴りやんだら
高橋弘希

発売日:2022年08月09日

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