- 2023.10.26
- 特集
「自分たちの姿と重ねて」「この部活に入りたい」。伊与原新さんの青春科学小説『宙わたる教室』を現役高校生がリアルに読んだ!
『宙(そら)わたる教室』(伊与原 新)
ジャンル :
#エンタメ・ミステリ
高校生自身が直木賞候補作を読み、議論しながら「自分たちの一作」を選び出す「高校生直木賞」。全国の本好きの高校生たちが、一堂に会した熱い選考会の末、これまで伊吹有喜さんの『雲を紡ぐ』、加藤シゲアキさんの『オルタネート』、逢坂冬馬さんの『同志少女よ、敵を撃て』、凪良ゆうさんの『汝、星のごとく』などを、受賞作に選んできています。
そこで、発売直後から話題を集めている、定時制高校を舞台にした伊与原新さんの青春科学小説『宙わたる教室』を、高校生直木賞参加校の生徒さんたちに読んでいただきました。等身大の作品への率直な感想をお届けします。(第2回/全3回)
向上高等学校 勝代幸さん
定時制高校について、この本を読まなければ、たぶん私はずっと知らないままだったと思います。
みんないろんな事情を抱えながらも、学校に行っているのすごいと思ったし、70歳超えても学校に行っている、おじいちゃんの生徒がすごい。さらに定時制高校の先生についてもちゃんと書かれていて、自分のいる環境と比べて読むことができました。
全員は救ってあげられないと、話の中で保健室の先生が言っていたのが少し悲しいけど、確かにそうだなのかもしれません。それでも、救ってあげれる子だけでも救おうとする先生の考えが、強いしすごいと思います。
みんなを救えないから全員諦めるじゃなくて、みんなを救えなくても自分ができることを精一杯やる、そんなふうにできたらいいなと思いました。
浦和第一女子高等学校 輿石杏樹さん
一人一人の年齢も立場もバラバラなキャラクターがしっかりと成長し、最後は完全に仲間として仲良くなっていたのが面白かった。
また、定時制という偏見も持たれる生徒たちが、実は意外な一面を持っていたり、要のように全日制の生徒をも成長させていき、重力可変装置などの化学要素も上手く取り入れられ、科学部が良くなっていくのを間近で見ることができたような作品だった。
三輪田学園高等学校 坂戸珠子さん
一度は諦めたことをまた挑戦しようとする人々がとても美しく書かれていて読んでいてとても引き込まれました。
また、人と人との繋がりがとても大切だということを改めて感じました。伏線が所々にあって、読み進めて回収していくのが楽しかったです。
科学の知識がたくさん詰まっていて、読んでいてとても勉強になりました。
灘高等学校 田村謙悟さん
伊与原新さんといえば理系的テーマを違和感なく文学作品に取り込む作家という印象が強い。私は、『博物館のファントム』など、理系色を強く押し出した作品も好きだ。
今作は、その理系的緻密さはそのままに、定時制高校の科学部において生まれた交流をそれぞれの部員の立場から描き出したものとなっている。
通常の学園モノとは異なり、事情を抱えた部員たちだからこそ織り成せるストーリー、そしてその描写は圧巻。夜の学校、お世辞にも環境が良いとはいえない中で、ぜひともこの部活に入りたいと思わせるその明るさが魅力的であった。
向上高等学校 小菅悠花さん
それぞれの背景を持ちながら、科学を通して明るくなっていく登場人物たちをみるのが楽しかったです。
登場人物が全て学生だけど、年齢が大幅に違うのが「定時制」という設定を上手く活かしていて良いと思いました。
とても楽しかったです。何回でも読み返したくなります。
三輪田学園高等学校 植木莉奈さん
私も科学部に所属しています。実験のシーンではどんな実験をしているのかたくさん考えてしまいました。
ただ、実験が進歩するにつれてどんな実験をしているのか、想像しづらかったので、いくつか挿絵があるといいなと思ったのですが――これは自分が実験後、論文を書くときなどにも言えることで、誰が読んでもわかるように描くと言うのは難しいことだと改めて実感しました。
今、私が所属する科学部も学会発表に向けて準備を進めているところで、つい自分たちの姿とも重ねて読んでしまいました。
自修館中等教育学校 笠原俊顕さん
多様性という言葉が行き交うこの時代に合う話だと思った。
長嶺と岳人達の間で起こる価値観の違いは特にそうだ。お互いのことを理解し受け入れることが最も重要だと訴えかけられているように感じた。
様々な辛い経験をした生徒達が科学に向き合い、皆で一つの目標に向かって全力を注ぐ姿に感動した。
もちろん科学の話も魅力的で、私自身初めて知ることも多く、とてもワクワクした。そして、彼らが今後JAXAとどのような活躍をするのか、早くも続編が気になる、とても面白い物語だった。
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