〈やり投げの北口榛花、男子体操団体…金メダルに通じるマネジメント&マーケティングとは!?〉から続く
パリ五輪で金メダルを獲得した男子体操団体の萱和磨、谷川航、やり投げの北口榛花をはじめ、日本を代表する選手たちの「アスリートマネジメント」を手がける一方、国内&国際大会などの「スポーツマーケティング」にも数多く携わる会社スポーツビズ。
日本のスポーツビジネスを新しい形で牽引してきた同社社長の山本雅一さんが、パリ五輪の現地視察往復の機内で読んだのが、池井戸潤さんの最新長編小説『俺たちの箱根駅伝』だった!
ロングインタビューの後編です。(前編を読む)
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メディアコンテンツとしての箱根駅伝
山本 僕は駒澤大学のOBなんですけれど、胸を張って自慢できるのが駅伝というコンテンツです。ただ自分が現役の学生だった40年前には、現在ほどの知名度ではありませんでした。僕自身はスキー部出身で、隣の部室が陸上部というか、駅伝部の部室でしたけれど、駒澤大学の周りを走っている気配も別にないし、何をしているのか不思議に感じていたくらいで、それほどの国民的行事ではなかったと思います。
箱根駅伝がメディアコンテンツとして、本当に数字が採れるようになったのは、日本テレビさんが全コースでの中継をはじめて以降でしょう。プロレスやプロ野球よりやや遅れて、また違ったコンテンツとして成長してきたんですよね。仕事柄、視聴率UPを狙って大物お笑いタレントを起用しようとする、編成局長の暴走ぶりはリアルだなぁ、と思いながら読んでいたんですが(笑)、最終的に硬派に落ち着くところも、「放送手形」なるものを受け継ぐ箱根駅伝の中継番組として正しい姿のような気がしました。
人を育てるマネジメントのヒント
――スポーツに携わる企業の経営者として読まれるといかがですか。
山本 僕の中で参考になったのは、選手たちを鼓舞して勝たせるためのマネジメントです。企業経営者として社員を育てたり、会社自体を発展させていったりする、マネジメントのヒントがぎっしり収められている……改めて自分の社員に声を掛けるとしたら、どういうタイミングで、どういったモチベーションを与えたらいいのかを、『俺たちの箱根駅伝』の甲斐監督からはすごく勉強させられました。
バスケットボール男子日本代表のトム・ホーバス監督もそうですが、一流といわれる指導者たちは、やはりここいちばんの勝負所での選手への声の掛け方、試合の流れを見る目線が優れています。だからチームが一体感をもって、最後の最後に五輪予選を勝ち抜くところまで持って行けたわけで、本番でもあと一歩のところまでフランスを追いつめた。こういった感覚を知るためにも、いま現場で頑張っているすべての指導者に、この本を読んでもらえたら、ヒントを得られるんじゃないかと思いますよ。
箱根駅伝の仕事も経験し、現在、法政大学のスキー部監督を兼任している社員がいるんですが、先ほど取材前に「今、『俺たちの箱根駅伝』をオーディブルで聞いて、感動している真っ最中なんですよ」と声をかけられました。本の中で甲斐監督が会社外で学んだことを、いずれ企業にフィードバックする仕組みを使っていましたが、うちの会社には機会があったらスポーツ指導者を兼任で任せて、そこで経験したことやネットワークを、きちんとビジネスにつなげていくという考え方を実践しています。
アスリートのマネジメントをしつつ、スポーツマーケティングも行っている会社というのは日本にはほとんどありません。僕らはどちらかというと選手の情熱や想いに立脚しがちな会社ではあるけれど、それだけだと選手の成績次第という博打みたいになってしまうし、コロナのように人が集まる、応援すること自体が止められる時だってあります。スポーツマーケティングという部分で企業はもちろんですが、地域の街づくりや、社会貢献にも積極的に携わりながら、「アスリートとともにスポーツの力で未来を創る」ことに、これからも取り組んでいきたいですね。
山本雅一(やまもと・まさかず)
1964年生まれ。駒澤大学卒業後、広告代理店に勤務。96年にスポーツビズを設立。アスリート・指導者・文化人の競技からライフプランまでをマネジメントしている。
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