- 2024.10.30
- 特集
編集長が語る【オールの讀みどころ】 2024年11・12月特大号は創作講座&令和のサバイバル競作
文:「オール讀物」編集部
ジャンル :
#小説
,#エンタメ・ミステリ
,#歴史・時代小説
「本の話」を読んでくださっているみなさん、いつもご愛読ありがとうございます! 「オール讀物」編集長の石井です。
5人の精鋭でつくっているオールの裏話、日常のよしなしごとについては、note不定期連載の編集部だより「オールの小部屋から」で発信しておりますので、チェックしてみてください! 定期購読者向けにニューズレターもお送りしております。こちらもぜひ、定期購読をお申し込みの上、お楽しみいただけたら幸いです。
この「本の話」の隔月連載「オールの讀みどころ」では、最新号について、どんなところに力を入れたか、企画の数々を紹介していきます。「オール讀物」11・12月特大号は、新人賞の発表号であり、本屋が選ぶ時代小説大賞の発表号でもございます。
さる9月18日。14回目となる本屋が選ぶ時代小説大賞の選考会が開かれ、2日後の9月20日に第104回オール讀物新人賞の選考会が開かれました。ともに会場は文藝春秋、部屋も同じ9階大会議室。同じ歴史時代ジャンルの小説が、ほとんど間を置かずに受賞作として送りだされたわけですが、かたや書店員さんがすでに刊行されている本の中から「イチオシの1作」を選ぶ賞。かたやベテラン選考委員(安部龍太郎さん、門井慶喜さん、畠中恵さん)が公募の短篇を手がかりに未来の作家を見出す賞。選考の様子も、選ぶ基準もまったく異なります。ひと口に「賞」といっても、ずいぶん個性が違うのが興味ぶかいところです。
本屋が選ぶ時代小説大賞には、赤神諒さんの『佐渡絢爛』(徳間書店)が、オール讀物新人賞には、和泉久史さんの「佐吉の秩序」が選ばれました。赤神さん、和泉さん、おめでとうございます。それぞれ巻頭のグラビア頁に、受賞者のお写真とともにインタビューを載せております。時代小説大賞は書店員のみなさんの座談会を、新人賞のほうは読みごたえのある選評を、ぜひお読みいただけたらと思います。「佐吉の秩序」は今号に全文掲載しております。
新人賞発表号の恒例企画として、「絶対、『作家』になる!」特集を組んでおります。なんと新人賞受賞の和泉久史さんは、昨年のオール11月号の「絶対、『小説家』になる!」特集を書店で見つけ、それを読んでオール新人賞への応募を決意されたのだそうです。そんなうれしい「応募のきっかけ」を聞きますと、俄然、今号の企画にも気合いが入るというものです。
今号を飾る「人気筆者の実践講義」は3つ。その1は、池袋ウエストゲートパーク20作目となる『男女最終戦争』が刊行されたばかりの石田衣良さんと、松本清張賞受賞作『イッツ・ダ・ボム』が刊行されたばかりの井上先斗さんによる対論「作家として生き残っていくために」です。
1、日本のエンタメに存在する決まったパターン、決まった作り方
2、シリーズを続けていくための2つの秘訣
3、執筆時のルーティン
4、「箱書き」というメソッド
5、新人賞に応募するときの注意
……などなど、私たち編集者が聞いても役に立つような目からウロコの内容でした。
企画その2は、第11回高校生直木賞を受賞した宮内悠介さんが、高校生たちの率直な質問に答えたQ&A「私はこうして小説家になった」。高校時代の得意教科・苦手教科といった微笑ましい話題から、文章修業法、他人の小説の研究法など、創作に役立つ具体的なお話まで、宮内さんらしい真摯で誠実な口調で語られていくのが印象的です。
企画その3は、やはり高校生たちを前に、万城目学さんがホンネで語った文章教室「エッセイの書き方教えます」。こちらがまた、あまりにも深い内容で驚きました。「自分のことを書く」べきなのか、いったん「自分から離れる」べきなのか――これはエッセイに限らず、小説を書く上でもとても大事なポイントでしょう。マキメ流創作術の一端が垣間見える、必読の講義ではないでしょうか。
ほかにもオール讀物には、作家志望者の役に立つコラムがたくさんあります。今回、とくにご紹介したいのは、元警視庁の服藤恵三さんによる「科学捜査官の目」。NHK「新プロジェクトX」の「オウムvs.科捜研~地下鉄サリン事件 世紀の逮捕劇~」に登場されたばかりなので、番組をご覧になった方もいるかもしれません。文春文庫『警視庁科学捜査官』では、地下鉄サリン事件はじめ、服藤さんがこれまで尽力されてきた捜査支援業務にまつわる秘話がふんだんに綴られていますが、オール讀物の連載コラムは「いま」そして「未来」の話です。今号のコラムの題は「特殊詐欺捜査の周辺事情」。IT、SNS、生成AIがいかに犯罪に用いられ、警察はいかにしてそれに対抗するのか。面白すぎるコラムは、警察小説、ミステリーのネタの宝庫でもあります。服藤さんの著書は、あの警察小説の名手・黒川博行さんをして「バイブルにして読まなあかん」と言わしめたほどなのです。
さて、今号のもうひとつの目玉企画が、「小説で学ぶ令和のサバイバル」。精神科医・和田秀樹さんと、『令和元年の人生ゲーム』が話題沸騰中の麻布競馬場さんのおふたりに、いまを必死に生きのびようとする人を描いてもらう、いわば競作企画です。
長らく老人医療の現場に立ち、『80歳の壁』がベストセラーになった和田秀樹さん。和田さんが描く「新楢山考」の主人公は還暦間近の壮年男性です。いっぽう麻布競馬場さんの短篇「本物の犬」は、高級老人ホームで“経営者目線”を合い言葉に働くZ世代の青年が主人公。現実には分断と対立が深まるばかりに見える高齢者世代と若者世代ですが、小説の中で主人公たちは世界をどんなふうに眺めているのか、彼らの生存戦略はいかなるものなのか――。はからずもおふたりの短篇は、互いに呼応するように「いま」を浮き彫りにしているように感じられます。自作解説インタビューもついた、前代未聞の“世代対決”競作。小説の新たな可能性を感じていただけるのではないかと自負しております。
“現代を描く”ということでいえば、NHK「ドラマ10」で人気沸騰中、伊与原新さんの『宙わたる教室』シーズン2が開幕したほか、石田衣良さんIWGPはなんとシーズン21に入りました。宮下奈都さんが“もうひとつのいま”を描く、心ふるえる連作も絶好調!
まだまだあります。新連載コラムとして、中野京子さん「カラヴァッジョと惨劇のローマ」(一挙2本掲載!)と、春日太一さん「徹夜映画オールナイト1本!」。中野さんの連載は天才画家の破天荒な人生が美しい絵画とともに綴られていきます。春日さんのコラムは、現在あまり顧みられなくなった(しかし無類に面白い)「徹夜名画」を東西問わず掘り起こしていくもので、映画初見のZ世代編集者とのゆかいなQ&Aも必読です!
髙見澤俊彦さんの歴史&SF新連載「イモータル・ブレイン」も絶好調ですし、神道入門コラム「神様について語ろう」は神社やお守りの歴史、参拝の作法、式年遷宮などについて語られます。
ほか、歴史時代小説からは、澤田瞳子さん「新米陰陽師」、坂井希久子さん「江戸彩り見立て帖」、諸田玲子さん「おまあ推理帖」、村木嵐さん「畸人・大田南畝」、木下昌輝さんの“人を造る”シリーズまでもりだくさん。
秋の警察小説特集として、今野敏さん「倉島警部補」、誉田哲也さん「警視庁公安部」、芦沢央さん「退職刑事」、長岡弘樹さん「交番相談員」、大山誠一郎さん「赤い博物館」、荒木あかねさん「浦上署強行犯係」、矢樹純さんの新シリーズ「刑事総務課は眠らない」と、豪華すぎるラインナップです。
読みどころいっぱいの「オール讀物」11・12月号をどうぞよろしくお願いいたします!
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『赤毛のアン論』松本侑子・著
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