
- 2025.03.11
- 読書オンライン
特殊体質を受け継ぐ忍者たちが令和の東京を疾走する! 推理あり、活劇ありの超エンタメ作。
文藝出版局
青柳碧人『令和忍法帖』インタビュー
出典 : #文春オンライン
ジャンル :
#エンタメ・ミステリ
,#歴史・時代小説
誰もが知っているおとぎ話や童話に巧みにミステリ要素を加えた「昔ばなし」シリーズ、「赤ずきん」シリーズが人気を博している青柳碧人さん。このほど刊行された新作『令和忍法帖』では「忍者」を題材に選んだ。明治維新によって姿を消したかと思われていた忍者が、実はひそかに警察組織に組み込まれており、現在も活躍しているという設定の連作短編集だ。

「もともと山田風太郎の『甲賀忍法帖』がすごく好きで、自分でも忍者を登場させる小説を書きたいと思っていたんです。江戸時代を舞台にすると『甲賀~』を意識し過ぎてしまうから、舞台は現代で。さらにミステリ的なプロットを組み込んだらどうだろうと考えました」
出来上がったのは活劇あり、本格ミステリ要素あり、人間ドラマありの超エンタメ作品だった。普段は会社員、キャバ嬢、料理人、小学生として日常をおくる忍者たち――。しかし警察の手に負えない事件が発生すると指令を受けて任務にあたる。
彼らは特殊な体質や受け継いだ忍術を用いて活躍するのだが、そんな忍者のワザに関する「科学的なウンチク」も本作の大きな魅力だ。たとえば、ヤモリのようにどんなところでも登っていける木陰(こかげ)一族は代々、手のひらや足の裏に微細な毛が生えており、それによって生じるファンデルワールス力によって吸着力を得ているのだ。
「ウンチクの部分はかなり『甲賀忍法帖』を意識しています。山田風太郎はもともと医学生で、作中の随所に医学知識をもとにしたいかがわしい説明が差し挟まれているんです。嘘と本当のバランスが絶妙で、自分もそういうのをやりたいなという気持ちが、この作品を書く上で大いにありました」

また、タイトル通り、「令和」というのも大きなキーワードだ。
「高輪ゲートウェイ駅、渋谷スクランブルスクエアなど令和になってから生まれた場所を取材して舞台にしています。麻布台ヒルズは執筆開始時にはまだ開業していませんでしたが、ペントハウスの値段が三百億円との噂を聞いて、すぐ小説に取り入れました(笑)。結果的に、作中でも過去と現代の対比を際立たせることになりましたね」
カルト宗教団体、連続毒殺魔、悪の技術者集団と多様な敵と闘っていく忍者たちだが、最終話では最強の敵集団と対峙することになる。そして、その背景には「三億円事件」が――。
「令和から平成をとばして昭和の未解決事件を書いてみたくて。消えた三億円の行方に関しては独自の説を提唱できたんじゃないかなと思います」

あおやぎあいと 1980年生まれ。2009年「浜村渚の計算ノート」でデビュー。19年刊行の『むかしむかしあるところに、死体がありました。』で本屋大賞ノミネート。
-
『高宮麻綾の引継書』城戸川りょう・著
ただいまこちらの本をプレゼントしております。奮ってご応募ください。
応募期間 2025/03/14~2025/03/21 賞品 『高宮麻綾の引継書』城戸川りょう・著 10名様 ※プレゼントの応募には、本の話メールマガジンの登録が必要です。
提携メディア