書評

おかげさまで、急性白血病の告知後四年が過ぎました

文: 加納 朋子

『無菌病棟より愛をこめて』 (加納朋子 著)

 最後に……。

 本作を世に出して以降、お身内をこの病気で亡くされたという方々からお手紙を頂きました。その中のお一人が書かれていたことに、打ちのめされる思いがしました。

(お身内は、)決して諦めても投げ出してもいなかった。最後まで頑張っていたんだ、それでも死んでしまったんだ、と。

 それは、本作のあとがきへの、血を吐くような抗議でした。

 あくまで私は、今まさに同じ病気と闘う同胞に向けて、エールを送るつもりであのあとがきを書きました。「力づけられた」とのお手紙も頂いています。けれど、その同じ文章が、ご遺族の方の永遠に癒えないかさぶたを剥がしてしまうようなことになるとは、愚かにも思い至りませんでした。

 私は自分が書いたもので、できれば読者の方にほんの少しでも喜んでいただきたいと願っています。どなたかに辛い思いをさせてしまうなど、まったく本意ではありません。けれど、私の未熟さから、そうした気持ちを抱かせてしまい、本当に申し訳なく思います。

 それではどのように書けば良かったのか。未だに答えは見つかっていません。骨髄移植後に、他の患者さんから「どうしてそんなに元気なの?」と尋ねられ、思わず絶句したように、このことに関して、私は最良の言葉を探しあぐねたままです。言葉が無力なのではなく、ただ、私が無力で未熟なのです。

 病とは、実に理不尽なものです。どんなに真摯に努力しようと、駄目なときは駄目。そしてまるで努力していない(ように見える)人が、あっさり快復してしまったり。人生そのもののように、不公平で残酷です。

 私の頭の片隅には、「再発したらどうしよう」「二次癌になったら……」という思いが、常にあります。もしそうなったら、またあの苦しみを最初から味わうのか。心が折れずにいられるのか。考えることさえ嫌だ、というのが正直なところです。けれどやはり、その場合であっても、諦めず、投げ出さず、地を這うようにしてでも前に進んで行くしかないのだろうとも思います。

 ――いつの日か、人の知恵があらゆる病に打ち勝つことを夢見つつ。

(文庫版あとがきより)

無菌病棟より愛をこめて
加納朋子・著

定価:本体660円+税 発売日:2014年09月02日

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