書評

おかげさまで、急性白血病の告知後四年が過ぎました

文: 加納 朋子

『無菌病棟より愛をこめて』 (加納朋子 著)

 近年、治療していただいたがんセンターで始まった取り組みとして、移植後患者のフォローアップ外来があります。短い診察時間では先生にお話ししにくい事柄について、病棟の看護師さんが相談に乗って下さるというもの。確か私はその第一号で、いの一番でこの紫外線についての質問をさせていただきました。

 皮膚に炎症が出た患者さんについての、まとまったデータが欲しいと思ったのです。移植後の年数、男女比、炎症が出た部位、直接の原因の有無とその内容、できれば患者さんの仕事内容(室外での業務が主である、など)。年数については、ある程度気をつけるべき時期が絞られる可能性がありますし、男女比は、一般的に女性の方が日焼けに気を使うので、その普通に行っているレベルの日焼け対策が有効かどうかの判断材料になります。ところが、後日返ってきた答えは、「そうしたデータはないそうです」というものでした。

 これはやむを得ない話だと思うのです。長く、白血病の治療とはイコール「患者の生命を救うこと」が第一義でした。医療者は必死で患者を生かそうと努力して下さっている。そして皮膚の炎症は、あらゆる副作用や合併症の中でも「命には関わらない」ものです。しかも患者本人の努力で防げるものでもあります。

 けれど――。

 医療の発達のおかげで、昔ならば途絶えていたはずの多くの「その後」が続く今。

 私はまあ、いいのです。待ち合わせに出掛けて行って、「キャディーさんが来たかと思った」なんて言われてしまう格好をすることになっても、美白に命を賭けているマダムは世にいくらでもいることですし、そこまで奇異な眼で見られることもありません。今さらビーチで遊べずとも、そしてスキーができずとも、がっかりするような歳でもありませんし。

 でも、若い患者さんには酷なことですよね……。彼ら彼女らの生活の質を、少しでも底上げするために、過剰に怯えず、適切な自己判断が下せるだけの材料があればなあと思うのです。「その後」の生活が、以前のようなごく「普通」のものに少しでも近づくために。

 と、ここまで書いてきて、私のこの文章そのものが、患者さんに無用な心配を与えかねないことに気づきました。主治医からは、術後一年未満の男性患者が、我慢できなくなってスキーに行ってしまい、大変なことになったというエピソードを伺っています(スキーでは顔にしか紫外線を浴びないのに、それが刺激のスイッチとなって全身症状となってしまったとか)。けれど私自身は、過去三回参加させていただいた患者交流会でも、診察で訪れる病院でも、顔や目立つ部位に皮膚の炎症を起こされた方をお見かけしたことはありません。ここから察するに、通常の生活範囲内での紫外線には、そこまで怯えずとも良いのかもしれません。逆に、強い紫外線を長時間浴びるとわかっている場合には、よほど覚悟して対策を練る必要がありそうですが。

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無菌病棟より愛をこめて
加納朋子・著

定価:本体660円+税 発売日:2014年09月02日

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