──この本を読んで、中山さんのようにアジア、イスラムを旅行したいと思う人もいると思います。そういった人になにかアドバイスはありますか?

中山  そうですねえ。現地語で「ダメ」とかいう言葉を覚えることでしょうか。「これを買ってくれ」、「この荷物を持ちますよ」と言われたときに、現地語で断ると、土地勘があるのかと思ってそれ以上しつこく言ってこなくなります。

──なるほど。しかしそうしたボッタクリに対抗するのは別として、中山さんのような「ハビビな体験」は今のあくせくと忙しい日本人に欠けているような気がします。

中山  日本の人たちとアジア、イスラムの人たちの大きな違いは、「お金を持っている人が貧しい人に施すのは当然」という考え方ですね。貧しい人たちが、強盗まではいかないけど、大富豪とか旅行者とかお金持ちからお金をもらう、テクニックでかすめ取るのは自分たちの理にはかなっているという。

──面白いですねえ。

中山  普通に八百屋で買い物をしていたら、後ろを乞食のじいさんが通りかかって。八百屋のおやじが「ほれ、アラーのお恵みだから、取っておけ」と言って、オレンジをやったりとか。
  凄いのは、もらう側も全然それを恥と思わず、当たり前のように、向こうの慈悲の心を引き出しているのだから当然だ、みたいな。

──お聞きしていると、今の日本が不景気とかいって落ち込んでいるのが、馬鹿馬鹿しくなりますね。

中山  本当にそうです。世の中にはお金よりも大切な価値観があるんです。
  それが「ハビビ」、家族や友人、大切な人たちこそ財産という考え方です。それをアジア、イスラム社会を回って見つけられたと思います。この本を読むことによって、今の日本が元気になってくれたら、こんなにうれしいことはありませんね。