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特別対談<br />池田克彦(第88代警視総監)×堂場瞬一

特別対談
池田克彦(第88代警視総監)×堂場瞬一

「本の話」編集部

『親子の肖像 アナザーフェイスØ』 (堂場瞬一 著)


ジャンル : #エンタメ・ミステリ

警察官のワークライフバランス

堂場 お久しぶりです。お会いするのは、新聞記者として警視庁を取材していた頃以来ですから、二十数年ぶりです。

池田 堂場さんが当時、読売新聞の記者として接していた方とは知らなかったので、お会いしてびっくりしました。私は1990年に警視庁総務部広報課長になって、そのあと警備第一課長をやっていましたから、報道のみなさんとは付き合いが長かったんですよね。

堂場 比較的事件が少ない時期だったのを覚えています。シビアなやり取りはなかったですね(笑)。

池田 新刊の『親子の肖像』、非常に面白く読ませて頂きました。事件もさることながら、警察官の生活をていねいに描いておられて。

堂場瞬一

堂場 「アナザーフェイス」シリーズはどちらかというと、家族小説の趣(おもむき)が強いんです。シングルファーザーの刑事が子育てをしながら事件に関わっていくという設定で始めたシリーズなんですが、今日は、現代の警察官のワークライフバランスについて、詳しく伺いたいと思っています。僕らからすると、警察官は夜も昼も、土日も関係なく、何かあったらすぐ現場に出て捜査している印象が強いのですが、家族関係とのバランスをとるのが大変ではないでしょうか。

池田 もちろん夜も昼もなく働いているところもありますが、一般的なイメージと違って捜査一課なんか、必ずしもそういう状況でもない。以前より殺人などの特捜事件が減っていますからね。実際、待機時間が長かったりしますし。じつは警視庁で一番超勤が長いのは贈収賄や経済犯罪を扱う捜査二課なんです。夜の情報収集活動が相当あるためですが。

堂場 昼間会えない人がけっこういて、どうしても夜や週末がつぶれてしまうんでしょうね。二課のみなさん、不健康そうな顔してます。飲み過ぎなのかな?

池田克彦(いけだ・かつひこ)元警視総監。1953年、兵庫県生まれ。76年、京都大学法学部卒業、警察庁入庁。警視庁第七機動隊長、警視庁警備部長等を経て、2010年に警視総監に就任。2012年より、原子力規制庁長官(初代)を務める。

池田 それもあるでしょうね(笑)。ちなみに私が警視庁で警務部長をやっている時、本部の超勤の多い人を10人選んだら、9人が捜査二課でした。もうひとりは警護、つまり、SPでした。昔とは違って、きっちり仕事の管理をしてから超勤命令を出すよう改善していっているんですが、それでも多いですね。

堂場 だから、捜査二課の担当記者も顔色が悪くなるわけですよね。噂だけ流れて立ち消えになる話も多いですし、胃が痛くもなります。

池田 記者さんも大変だと思います。今はいわゆるサンズイ(汚職・収賄事件)が昔に比べたらかなり減りました。私がある県の捜査二課長をしていたころは、全国でサンズイを挙げない県はバッテンがついてきたんですが、いまは挙げない県のほうが多い。ちなみに以前サンズイが一番多かったのは福岡県でした。

堂場 僕は1年半、警視庁のクラブにいたんですが、サンズイは1件か2件だけだったかな? 最近、地方では時々あるものの、中央ではほとんど聞きませんね。いわゆる経済事犯、詐欺とかのほうに捜査の重点がシフトしている印象があります。隠す手口がうまくなったのか、多少は倫理観が働くようになったのか。

池田 後者が大きいと思いますね。割に合わないというのもあると思います。起訴金額は、いちがいに言えませんが、月収の半分くらいでも起訴されることもあります。30万の人なら15万円ですね。そんな時代の変化の中、二課もできるだけ残業を減らし、コンパクトに仕事をやって業績を上げようという流れになっています。

堂場 成果主義に近い考え方ですね。

池田 そうです。すぐれた署長のところはどんどん超勤を減らしていますよ。その上で、実績を上げている人が手当をもらえるようにしようという発想。ずいぶんスリム化が進みました。ただ昔から無理する人がいるのも事実で、職員の間で、「無理すれば、無理をするなと、無理をいい」という標語が陰で流行ったことも(笑)。

堂場 無理3連発(笑)。昔から警察官と新聞記者は辞めたあと早く亡くなると言われてますよね。

池田 その噂が本当かどうか疑問ですが、仮にそうだとすると、ひとつは交代制勤務が原因だと思いますね。超勤よりもむしろ交代制勤務で体のバランスを崩す方がいるのではないでしょうか。

堂場 昼、宿直明け、非番のくり返しで、慢性的に時差ぼけ状態ですよね。

池田 警視庁の交番は、第1当番、第2当番、非番、日勤で回すんです。他県は当番、非番、日勤の3交代で回すんですけど。第1当番というのは交番にいるのが朝から夕方まで、第2当番は夕方から翌朝まで、その次が非番。当番の時に夜中にずっと徹夜したり、2人勤務で片方が起きて片方が寝るというのを3時間交代でやったりもします。ただ、実際には歌舞伎町や上野の公園あたりは取り扱いがだいたい夜中で、1人や2人じゃ回せないですから、みなさんずっと徹夜してると思います。

堂場 夜勤のハードさは勤務地によりけりなんですね。警視庁本部へ行く前、サツ回りをしていた渋谷も夜がきつそうでした。

池田 渋谷を含めた第三方面(世田谷区、目黒区、渋谷区)も非常に事件の多いところですからね。警備事象も多いんですよ。

【次ページ】海外と日本の警察組織の違い

親子の肖像 アナザーフェイスØ
堂場瞬一・著

定価:本体550円+税 発売日:2014年10月10日

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