話を戻しましょう。男はそんな、戦いたくて仕方がない馬鹿な生き物なのです。とくに、大人数になるとその傾向は顕著です。
戦争とまでいかなくても、飲み屋でも2人ならやさしく気を使って会話するのに、団体で飲み始めると、「あいつはさ」と、人の悪口が始まり、威勢のいいところを見せたがるようになる。2人で仕事の打ち合わせをすればスムーズに進むのに、大人数の会議となると、口角泡を飛ばして言い争ってしまう。ネットも1人でやっているのならいいのに、SNSや掲示板で交流するから喧嘩したり炎上したりする。
ではどうしたら戦いを防ぐことができるのか? 先生は本書で、なるべくそのヒントをちりばめたつもりです。
まず第一に、できるかぎり、個人でいなくてはならない。できるかぎり、団体から離れておかなければならない、ということです。
「自分塾」がここでこそ物を言うのです。先生は一貫して、個人で楽しむことの必要性を強調してきました。さまざまな意味で、オナニーが大事なのです。
第二に、見たままのこと感じたままのことを、なるべくそのまま口にすることです。ラーメンを見たときの感想の正解は「ラーメンだ」だと教えました。そこでうまいかまずいかなどを語り出した瞬間に、ラーメン戦争が起きてしまうのです。
最後に以上を踏まえ、「いまが幸せだ」と思う癖をつけることです。よく、「幸せになりたい」という言葉を聞きます。結婚式では「幸せになります」と言います。しかし、それはつまり、いま幸せではないと宣言しているようなものです。それでは、いつまでも幸せだと思えず、人と争ってしまいます。
本書を読んできた皆さんはいま、くすくす笑ったり、「馬鹿だなあ」とにやけたりしていることでしょう。それで十分です。いまさっそく、口にして呟いてみてください。
「幸せだなあ」と。
(「ポケット版あとがき」より)
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