おかしな日本の医療制度
白石 先生、「混合診療」については、どう思われますか?混合診療は保険診療と自由診療を組み合わせたものですが、現行の医療制度では禁止されています。それが、今回、東京地裁で「禁止する法的根拠はない」という判決が出ました。厚生労働省はどうするんでしょう。
中原 混合診療なんてものがあること自体、おかしいんですよ。国内未承認のクスリを使うと、入院費や検査費など、本来は保険適用になるはずの治療もすべて自己負担になってしまいます。たとえば抗がん剤などは、欧米では効果が認められているのに、日本では未承認のものがいくらでもあります。それを輸入して使おうとすれば、がんの治療にかかる費用がすべて自己負担になってしまいます。月に百万円近くの治療費を自己負担しなければならなくなるわけです。
白石 日本は、新薬の承認が遅すぎますよね。人種のるつぼのアメリカで副作用が出ないのに、日本人だけに危険だというのはおかしな話。日本人は体も小さいし虚弱体質だから? そんなはずありませんよね。日系人も服用して問題ないわけですから。
中原 とにかく、新薬承認のタイムラグをなくすべきでしょう。欧米なら使えるのに、日本は二~三年も待たなければならないというのは、おかしな話です。
白石 話は変わりますが、今回、国は医師数を増やすという対策を取りました。先生に言わせれば、それも愚の骨頂ですか。
中原 私が大学を卒業した一九七〇年当時は、医師が十一万人でした。それが、いまは二十八万人に増加しています。医師数が不足しているのではなくて、診療科目や地方によって偏在があるのが問題なんですよ。
白石 小児科や産婦人科など、リスクの高い診療科目は少ないということですね。
中原 そういう診療科目は医学生に人気がないので、局所的に医師不足が起こっているんです。成績優秀で要領がいい医学生に人気のあるのは、皮膚科と言われています。皮膚科の医者が、夜中に救急で呼び出されることなど、滅多にないでしょう?
また、新しい研修医制度では研修先の医療機関を自由に選べるようになったので、卒業した大学の付属病院を選ぶ医学生が減りました。医局は医師不足になるので、各病院に派遣していた医師を呼び戻すことになります。その結果、地方では医師が急速に足りなくなるという事態が起きている。新制度の導入で、医療格差は広がる一方なんです。
白石 厚生労働省は、シミュレーションをせずに制度を導入して、いざ実施してから「止める」「止めない」と言うことが多いですよね。後期高齢者医療制度も、その典型ではないでしょうか。
中原 まず、七十五歳で区切っているわけですが、その七十五歳という年齢にほとんど根拠がありません。そのうえ、当初は高所得者から保険料を多くとる予定だったのに、蓋を開けてみたら低所得者でも負担が増えているケースがありました。保険料の負担は年齢ではなく、収入で区切るべきだと思うんですよ。
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