- 2014.10.26
- インタビュー・対談
巻末特別対談
科学の研究って役に立つの?
成毛眞×田中里桜
「本の話」編集部
『理系の子 高校生科学オリンピックの青春』 (ジュディ・ダットン 著/横山啓明 訳)
ジャンル :
#ノンフィクション
こういう科学者になりたい!
成毛 「面白そうなことをやる」、「自分が面白そうなことだけやる」っていうのは、正しいような気がするんです。この本に出てくる人たちは、みんなそんな感じがありますよね。「自分がやりたいことだけやっています」という。実際、ISEFでほかの人たちを見ていて、どんな感じでした?
田中 一番、目についたのは、海外の学生は企業とか大学と連携してやっている人が多いなということでしたね。私も「どこがスポンサーなんですか?」って聞かれて、「え?」ってなりました(笑)。
成毛 でも、企業をどうやって見つけるんだろう。
田中 アメリカの科学の授業で、たとえば大学の先生とか企業のエンジニアの人とかを自分で見つけて、教えてもらいなさい、っていう授業があるみたいですね。
成毛 そこまで授業でやるって、すごいな。この本を読んでいると、アメリカの高校って研究設備が充実している感じもある。ガスクロマトグラフィーとか分光装置とか、装置がいっぱいある学校があって、もちろんそうじゃない学校もありますけれど、日本の高校の理科教室の設備と全然違う感じがする。
田中 でも私が思うに、自分で興味を持って、自分から働きかけていけば、日本でもチャンスがないとは思わないんです。というのは、私自身は身近なことから興味を持って研究をはじめました。私の住んでいるところは天然ガスの産地なのですが、ガス爆発事故をきっかけに、この土地はどうしてそんなに天然ガスを含んでいるんだろう、ほかの土地とどう違うんだろう、と思ったんですね。それをガス会社に聞きに行ったこともあります。有孔虫については博物館で、有孔虫というのを使って地層の成り立ちを調べることができる、という展示を見て、ああ、これで調べられるかもと思って、その博物館の専門の先生に聞いたのが始まりなんです。
成毛 それで刺激を受けて、興味を持って。
田中 はい。だから、「自分の問題を見つける」ということがどういうふうに起こるのかというのは、学校で「そういうことをしなきゃいけない」と言われるより、さっき成毛さんがおっしゃったように「自分が好きなことをやる」ということのほうからじゃないかな。自分の問題じゃないかなと思いますね。
成毛 大学を出てから、学部を出てからのイメージって何かあるんですか。
田中 ISEFの審査員の先生を見て、すごい印象が強かったので、私のビジョンとしては、ああ、こういう科学者になりたいなあって思いました。今はまだ手探りですが、いろいろなことを広く深くやってみようかなと思っています。
成毛 なるほど。広くやるのはいいでしょうね。大学にいるうちに、いろんなテーマを。今は学際的な学部があるから、やろうと思ったら意外といろんなことができるんでしょうね。いい時期に生まれてきましたね。
田中 ISEFでお会いした先生方は面白い人たちばっかりなんですよ。アメリカだけじゃなくて、世界中から科学者が審査員として、1000人ぐらいかな、集まってくるんですが、お茶目な感じの人たちが多くて。質問も全然違った視点からのものが来るので、ああ、日本とは違うんだなと思いましたね。
成毛 大学は日本の大学に行ってるんですね。
田中 はい。でもISEFで、どこかの大学から声がかかりましたよ。UCLAとかの先生が、研究やるならどうか、みたいな(笑)。
成毛 企業からはなかったですか。
田中 私のやっている研究がお金になる内容じゃないので。
成毛 でも、地質関係者というか、ガス屋とか石油屋とか、興味なかったのかしら。
田中 地質系に注目が集まる直前ぐらいだったんです。最近は割と“熱い”というか、メタンハイドレートとか、実用性が出てきた感じですよね。私は企業から声がかかったことはないんですけど、これから一番熱い分野だという気はします。
成毛 穴掘りそのものにも興味はあるわけでしょう。「穴掘りそのもの」と言うのも変だけど。
田中 いや、ほんとにそうです。それが好きで。田舎なんで、すぐにフィールドに行けるんですよ。
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