『北の国から』シリーズを手掛けた名監督が率いる日本映画放送が好調だ。『時代劇専門チャンネル』ではオリジナル時代劇を、『日本映画専門チャンネル』も劇場公開作を制作。新たな視聴者を開拓している。業界を牽引するリーダーの哲学に迫る。
ここ最近、テレビ離れがさかんに言われていますが、ライバルとされるインターネットは、似て非なる媒体です。視聴者に対するアプローチが問われる“厳しい時代”が来ています。ニーズに応えるだけでなく、我々、製作する側で考えて、「ある種の感情」を与える番組を提供し、視聴者の心を揺さぶることが大切になると思っています。
そのためには企画がすべて。私の場合は、ネタ探しのために書店を歩くことが多い。棚に並んでいる本の背表紙を眺めて歩いているだけで「こんな本があったのか」などと、頭が企画モードに切り替わるんです。
なかでも『風と共に去りぬ』は、いまだにこれほど面白い本はないと思っています。魅力を一言でいうと、スカーレット・オハラの強さ。これまで悩める女性像は描かれてきましたが、「明日があるさ」と言わんばかりにエネルギッシュに生きる姿が新鮮でしたね。この小説には、南北戦争を経て没落していくアメリカ南部の哀愁も描かれています。産業革命が人々の生活を一変させますが、南部の人から見れば、北部の「経済優先」の価値観は決して幸せではない、という見方が提示されていることも印象に残っています。
初めて読んだのは、高校から大学に進学するタイミングでしたが、フジテレビに入社して映像作品を作っていくなかで、「女性の強さをブローアップしていこう」という考えを持ったのは、この作品の影響だったかもしれません。
『鬼平犯科帳』を含めて、時代劇の世界も現代社会でも、日本はやっぱり武家社会です。とはいえ、武士は戦って明日死ぬかもしれない存在ですから、家庭を牛耳っているのは、女性の価値観だと思うんです。結局、平安の昔から、世の中は女性が握っている。女性は強しです。
『散るぞ悲しき 硫黄島総指揮官・栗林忠道』と『ルーズベルトの責任』は、両方を読むことで、見えてくる歴史があります。
『散るぞ悲しき』も、ある企画を考える際に手に取ったのですが、当時の高級将校は、海外で駐在武官などを経験し、国際感覚を持っていましたから、「戦争の勝算」を冷静に分析できていたはずです。それでも、何かを守るために、自ら身を捨てていくというものの切なさが伝わってきて、これが泣かせるんです。
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