- 2016.12.06
- インタビュー・対談
作家発! 書き下ろし豪華アンソロジーの魅力~人気作家9名が競演。
第二文藝部
第一弾『捨てる』ができるまで~(篠田真由美・永嶋恵美・福田和代・光原百合)
ジャンル :
#エンタメ・ミステリ
書き下ろしアンソロジーの強みは!?
篠田 『アンソロジー 捨てる』最初の1篇は、大崎梢さんの『箱の中身は』。夕方の公園に女の子がひとり、膝の上に箱を乗せてベンチに座っている場面から始まります。箱の中身はなんだろう?という誰もが持つ興味があって、そこから予想外に話が転がって行く……その手際が素晴らしい。最後は、ちょっとほのぼのしたいい気持ちになりました。
光原 続いて2篇目の松村比呂美さん『蜜腺』は、うってかわって怖いお話。息子の死を境に、嫁と姑のドロドロした関係が、食べ物をはさんで描かれていく……実は私、「よくぞそこまでやった!」と読んでいてスカッとしてしまったんですけど(笑)。全体としてはホラーに近いですよね。
永嶋 そうですね、嫁の考えぬいた行動にぞっとします……。『アンソロジー 捨てる』には、ドキドキ怖い物語がいくつも登場しましたね。新津きよみさんの『お守り』も、ヒロインの、お母さんとしての視線が印象的で、そして「秘密の砂」の正体が気になりつつ、どこに連れて行かれるのかわからない不思議な感じが……。これもホラーかもしれません。
光原 近藤史恵さんの『幸せのお手本』も、旦那さんを大事に思う幸せな主婦のお話かと思って読んでいくと……衝撃的なラストとの落差が大きくて、「まさか!」と声が出てしまいました。
福田 祖父母の理想的な夫婦仲に憧れる彼女の叙述が、段々危うい感じになるのがハラハラしました。
そして最後は『花子さんと、捨てられた白い花の冒険』、これは「ゴミ集積所」という身近な場所が事件の発端になるんだけど、隅々まで柴田よしきさんらしい1篇でしたね。
篠田 柴田さんがお好きな、野球とか植物がたくさん登場してきます。野球選手の生活とか、ベランダで植物を栽培する様子なんかの詳しい場面が事件の謎にうまく生かされていて、読んでいて楽しい。改めて、9篇にはそれぞれの作家の持ち味がよく出ています。
光原 私はお題を与えられて書くのは苦手だと思い込んでいましたが、実は楽しいことなんだと改めてわかりました。
永嶋 私も、これまでアンソロジーとは全く縁がなかったと思ってましたが、読者としては結構手に取ってたことに気づきました(笑)。編者がいて、既存の作品を1つのテーマに沿って選んだアンソロジーはたくさんありますね。名作アンソロジー、時代小説アンソロジー、犬や猫の動物もの、失恋とか、最近ではオリンピックや日本刀がテーマのものがありました。
光原 1人の作家の作品集のなかから1作だけ切り取ってアンソロジーの中に入れると、他の作家の作品と響き合って、また違った印象が生まれるのも面白いです。
福田 読者にとってアンソロジーは、あの作家がこんな短篇を書いてるんだ、と気づきやすいし、知らない作家にも気軽に出会えて、読む幅が広がるものだと思います。ただ、古今東西の名作を集めてきたアンソロジーだと、「この作家おもしろい!他の作品を読みたい!」と思っても、絶版になっていて読めないことが多い。その点、今回みたいに書き下ろしアンソロジーの場合は作家がみな現役ですから、書店ですぐ買えます (笑)。
永嶋 次は、さらにパワーアップして11名が「隠す」というテーマに挑みます!
(『アンソロジー 隠す』2017年2月 小社より刊行予定)
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