映画『ジュラシック・パーク』が公開された1993年、筆者は受験生でした。筆者の親(とくに父)は「映画を見に行く時間があれば、勉強をしろ」という教育方針。しかし、どうしてもこの映画を見たかった筆者は、親にみつからないように、自室のあった2階の窓からこっそり抜け出して、有楽町まで見に行きました。もちろん、帰宅した時には不在がばれていて、こっぴどく叱られたものでしたが……。そんなジュラシックパーク・シリーズの新作が14年ぶりに公開されるこの年に、ティラノサウルスに関する新刊を上梓できることをうれしく思います。
化石を研究する学問を「古生物学」と呼びます。もちろん恐竜の研究も、この古生物学の一分野として進められています。筆者自身は、いつのころからか恐竜が好きで、サイエンスとして学びたくなり、大学から本格的にこの分野に足を踏み入れました。しかし現在でこそ、本書の監修である北海道大学の小林快次准教授の研究室などで恐竜を研究することができますが、当時は「恐竜が研究できます」と看板を掲げている研究室はなく(少なくとも筆者にみつけることはできず)、またインターネットも黎明期で情報も少なく、結果として、選んだ大学で恐竜を研究することはできませんでした。しかし大学と大学院で、地質学と古生物学を専攻し、実際にさまざまな化石と出会ううちに、そのサイエンスとサイエンスのもつエンターテイメント性に魅せられ、大学院修了後もペンでこの分野を中心に追うことを生業とするようになりました。
現在は見ることのできない過去の生物を、化石という証拠や、化石が埋まっていた地層の状況などをもとに分析し、そのデータを軸に推理を展開し、議論を交わし、姿や生態、生きていた環境、そして進化を解き明かしていく。それが古生物学の醍醐味の一つです。かつて筆者が取材した研究者の一人は、「古生物学は探偵学なのです」と語りました。筆者は全面的にこの意見に賛同します。知的好奇心をくすぐり、知的探究心を満たすエンターテイメント性あふれるサイエンスであると、筆者は考えます。
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