圭とまち子
この連作は、書いている途中でいろいろなことが腑に落ちてきたんですね。
ラストは見えていたけれど、1篇ごとにすこし間をおくことで何度も博人に、離れては近づいていった気がします。「ブルース」でおさななじみの圭が登場した時、編集者に「彼女はきっとまた登場しますね」と言われて、どうだろう、そうなのかなと思っていたら、次の「カメレオン」でまち子が登場して、ああ、博人が楽なのは、まち子みたいな女なんだ、と書きながら分かったこともありました。圭は博人にとって出自を知っている特別な女ですが、自分のことを理解してしまう女より、分からないときっぱり口にできるような女が博人には合っていたのでしょうね。
まち子とはどこで暮らしたのか
街でもきっと見晴しのいいところで暮らしていたんじゃないかなと。
崖の下で、ずっと見下ろされて生きてきたから、たとえば港一帯がみえる高台のあたりに住居を決めたんじゃないかと思っています。
博人の「行き止まり」
莉菜が凱旋写真展をしたところは、位置としては観光国際交流センター、建てられた経緯ほかは全くのフィクションですが、奥の茶色い建物が名前も同じ芸術館です。私、博人が結婚するとは思っていなかったんです。ちゃんと籍をいれて、相手の連れ子である莉菜をよびよせて、その血の繋がらない娘に心から愛されて死んでいくなんて――よくまあ、ここまで恰好よく(笑)。
嘘でしょ、と思いながら書きました。こんな格好いい男、いませんよ。義理の娘とは男女関係ありませんしね。でも実は、性愛ってそんなに強いカードじゃないって思っているの、男と女の間で。そして、ここまで強くなる必要もない気がするの、男の人って。
「松本清張の『けものみち』は書けないタイプなのかも、と思います。主人公が男だから、『ブルース』の世界は書けた。博人が男だからファンタジーでいけるのね。夢の男には挑戦したけれど、夢の女は私には書けない気がする」という桜木さん。でも、ぜひいつか桜木さんの「夢の女」を書いてください。
本日はご案内いただき、ありがとうございました!
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