特集

とどめを刺さず、もてあそべ。そのモヤモヤは上野千鶴子のひとことで解決

文: 上野 千鶴子

『上野千鶴子のサバイバル語録』 (上野千鶴子 著)

日本におけるジェンダー研究の第一人者である上野千鶴子さん。本書は過去の著作群から上野さんのエッセンスが詰まった140の「金言」を選び抜きました。毀誉褒貶を生き抜く著者初の「語録」は、仕事や家族、結婚や老後など日々まとわりつく不安を乗り切るヒントにあふれています。

『上野千鶴子のサバイバル語録』(上野千鶴子)

親から子への最後の教え

 親が子へ最後に教えられることは、自ら老いていく姿を見せてあげることです。

 老いるというのは、だんだんくたばってく、ということ。だったら、自立できない弱い生き物に変わってゆく自分の姿を、子どもに晒したらいいと思うの。子どもに迷惑かけたくない、なんて遠慮しなくてもいい。だって、かつて子どものオムツ替えてやったんだから、そのくらいの迷惑をかけてもいいじゃない。

 子どもにしてみたら、知らない他人が老いても実感が湧かないだろうけど、自分の親が老いてゆくのを目の前で見れば、やがて自分も同じようになると切実に実感し予期できる。それこそ、親ができる最高にして最後の教育なんです。

 

「おひとりさまの老後」から「在宅ひとり死」へ

 私のいちばん新しい研究テーマは「在宅ひとり死は可能か」というものです。ひとりで生きてきたんだから、ひとりで死んでいってもいいじゃないか、って。

 おひとりさま、イコール独居、イコール孤立、というのは、本当に勘弁してほしい。おひとりさまだから孤独ということは、決してない。そもそも、高齢者のみならず、中年、若い世代でも、独居者は否応なく増えているしね。おひとりさまでも、支え合える親戚か友だちか知人がいて、完全に孤立していなければ大丈夫。金持ならぬ「人持ち」なら、なんの問題はないんです。

 ずーっとひとりで暮らしていって、元気なうちはいいけれど、後でどうなるか分からないよ、と脅してくる人も多い。けれども、だんだん弱って、だんだんヨタって、ある朝、死んだっていいじゃない。「おひとりさまの最期」という本にもくわしく書きましたが、だから孤独死と呼ばず、在宅ひとり死と呼んでほしいですね。

 

ひとたび利権構造ができたら、止まらない

 システムが出来上がってしまったら慣性で動きます。そうすると全国津々浦々、利権構造がはびこり、やめられない、止まらない。

 いったん既得権益集団ができたら、組織は自ら内部改革で変わることは、ほぼありません。大組織に、自浄能力はないですから。そのことを私は、大学という組織のなかで痛感しました。

 では、変革はどこから来るか。それは、外からしか訪れません。原発事故はある意味、外から来た危機、いわば大きな外圧でした。本当は、このうえない変革のタイミングだったのですが……。

 歴史的にみても、権力構造の核心部にいる人たちが、自ら変革を起こして変わったことは皆無に近いです。明治維新もそうだけれども、周辺にいた人が、権力中枢が無視できないくらいの力を蓄えていって、いつの間にか宿主と交替する。そのシナリオしかありません。だから、お前は組織のガンだ、と言われたら、むしろ喜んだほうがいいかも。あ、でもガンは宿主と一緒に滅んでしまうから、宿主の外側にいないとですね。

上野千鶴子のサバイバル語録上野千鶴子

定価:本体560円+税発売日:2019年04月10日


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