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近代的人間観を捨てよ!

近代的人間観を捨てよ!

『脳・戦争・ナショナリズム 近代的人間観の超克』 (中野剛志・中野信子・適菜収 著)


ジャンル : #ノンフィクション

適菜 そもそも現世に居場所がないから、理想社会を夢見るわけで。

剛志 逆に保守では、女性性を武器として前面に押し出す人が多いですね。

信子 そう。それは生まれ持ったものを肯定される環境で育ってきたからではないかと。

適菜 むやみに髪の毛を盛り上げたり。保守論壇というか実態は単なる反左翼論壇なのですが、あの手の界隈には昔から「ババア枠」というのがあるそうです。世の中にはババアに叱られたいという性癖をもつ人が結構多いので、ステレオタイプの「保守風」言説を繰り返す商売が成り立つと。

 他にも気になることがたくさんあります。左翼系メディアの記者は小さなポケットがたくさん付いたチョッキを着ていたりする。戦場カメラマンを気取っているんですかね。あのポケットの中に何が入っているのかも謎ですが。

剛志 アキバのあたりを歩いてる四十過ぎのオタクは、必ず太っていてリュックを背負っている。

信子 そして、きまってチェック柄のシャツを着てる。

適菜 それと運動靴。汗臭い。声が甲高い。奴らは会話の文脈と関係なく薀蓄を垂れ流しますね。「ふむふむ。あっ、ボクそれ知ってるっ!」みたいな。ところで、ルックスの良し悪しと知能の高低は連動するという海外の研究があるようです。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスのサトシ・カナザワ准教授の研究によると、「とくに男性は、外見と知能の関係性が女性より強い」という結果が出ています。

信子 衝撃的ですよね。これも話題になりました。

適菜 これは、英国で生まれた一万七千四百十九人の男女を対象にした調査で、被験者が幼少時代から大人になるまでの過程における学力の向上、知性、ルックスの関連性を調べたものです。この調査では、外見が魅力的な女性は平均より一一・四ポイント、外見が魅力的な男性は同じく一三・六ポイントもIQ(知能指数)が高いという結果が出た。さらに、中流階級の女性は労働者階級の女性よりも、おおむねIQが高いとも報告されています。

 カナザワ氏は「社会的階級やボディサイズ、健康状態にかかわらず、外見的魅力は明らかに知能と連動しています」と指摘。「美しい人がより知的だという私たちの主張は、純粋に科学的なものです」と付け加えています。

(序章より)

中野剛志(なかのたけし)

批評家。1971年生まれ。東京大学教養学部(国際関係論)卒業後、通商産業省(現経済産業省)に入省。エディンバラ大学で博士号取得(社会科学)。経済産業省産業構造課課長補佐、京都大学大学院工学研究科准教授などを歴任。専門は政治経済学、政治経済思想。著書に『日本思想史新論』(ちくま新書)ほか。


中野信子(なかののぶこ)

脳科学者。東日本国際大学教授、横浜市立大学客員准教授。1975年生まれ。東京大学工学部卒業、同大学院医学系研究科脳神経医学専攻博士課程修了。医学博士。2008年から10年まで、フランス国立研究所ニューロスピン(高磁場MRI研究センター)に勤務。著書に『脳内麻薬──人間を支配する快楽物質ドーパミンの正体』(幻冬舎新書)ほか。


適菜 収(てきなおさむ)

作家・哲学者。1975年生まれ。早稲田大学卒業後、出版社勤務を経て執筆活動を開始。ニーチェに関する一連の著作で論壇の注目を集める。著書に『ミシマの警告保守を偽装するB層の害毒』(講談社+α新書)ほか多数。訳書にニーチェ『キリスト教は邪教です!現代語訳「アンチクリスト」』(講談社+α新書)がある。

※文中敬称略

 本書の内容は著者個人の見解であり、所属組織とは関係ありません。

脳・戦争・ナショナリズム 近代的人間観の超克
中野剛志・中野信子・適菜収・著

定価:本体770円+税 発売日:2016年01月20日

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