2016.07.29 書評

感涙必至の青春ミステリー

文: 編集部

『ジョイランド』 (スティーヴン・キング 著/土屋晃 訳)

『ジョイランド』 (スティーヴン・キング 著/土屋晃 訳)

 スティーヴン・キングの長編小説Joyland(Hard Case Crime, 2013)を文庫オリジナルでお届けします。本書はミステリー専門の出版社からペーパーバック・オリジナルで刊行された作品で、アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀ペーパーバック部門の最終候補作となりました。

 このことからわかるように、本書『ジョイランド』をジャンル分けするなら「ミステリー」になります。さまざまな土地の遊園地で殺人をくりかえしているとおぼしき連続殺人鬼を探すプロセスが物語の焦点。しかし、書いているのがキングですから、もちろん、ありふれたサイコ・サスペンスにはなりません。過去のキング作品でいうなら「スタンド・バイ・ミー」に通じる、切ない青春小説の味わいが全編に漂っています。

 舞台は一九七三年のアメリカ、〈ジョイランド〉という名の遊園地のある海岸沿いの小さな町。主人公は大学生の「ぼく」ことデヴィン・ジョーンズ。現在のデヴィンは年老いた編集者で、いま、四十年前のできごとを綴っているという設定です(このあたりも「スタンド・バイ・ミー」に似ています)。

 その夏、デヴィンは大学からも故郷からも離れたノースカロライナの町ヘヴンズベイの遊園地で、アルバイトをはじめます。同じ大学に通う恋人のウェンディは女友達とボストンでアルバイトをすると決めてしまい、夏休み中は遠距離恋愛になることが確定。もともとウェンディとは二年間もつきあっているのにいまだに“寝る”ところまでは行きつけておらず、自分はついに振られるのかもしれないという不吉な予感に苛まれていたデヴィンは、「歓喜の国」という名前に惹かれて〈ジョイランド〉でのアルバイトを決意したのでした。

 同じ家に下宿する大学生トムとエリンはじめ、多くのバイト学生とともに〈ジョイランド〉で仕事をはじめるデヴィン。いずれも一癖ある古株の職員たちから、ときにはどやされ、ときにはあたたかく迎えられながら、学生たちは遊園地でお客たちを喜ばせる仕事に馴染んでいきます。

 そんなある日、デヴィンは遊園地の幽霊屋敷〈ホラーハウス〉にまつわる怪談を知らされます――四年前、男と二人で〈ホラーハウス〉に入った若い娘が暗闇の中で喉を切られて殺害された。死体は施設内に捨てられていて、男は何食わぬ顔で現場から立ち去ったという。以来、〈ホラーハウス〉には殺された娘の幽霊が出没し、〈ジョイランド〉の占い師マダム・フォルトゥナは決して〈ホラーハウス〉には入ろうとしない……

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ジョイランド
スティーヴン・キング・著/土屋晃・訳

定価:本体860円+税 発売日:2016年07月08日

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