本屋の好みも千差万別
――さて、いよいよ本題に移りましょう。「本屋が選ぶ時代小説大賞」を決めるのは、小誌にとって初の試みです。膨大な中から候補作を選ぶにあたっては、評論家の縄田一男さんに依頼し、まずは今年度刊行された20作品をご推薦いただきました。ただし、シリーズものについては、単巻での評価が難しいため含まれていません。それをさらに編集部で精読した上で、
伊東潤『黒南風(くろはえ)の海』(PHP研究所)
犬飼六岐『囲碁小町 嫁入り七番勝負』(講談社)
佐藤賢一『ペリー』(角川書店)
志水辰夫『夜去り川』(文藝春秋)
山本兼一『銀の島』(朝日新聞出版)
の5作品を最終候補とし、皆さんには、これらを事前に読んできてもらいました。
まず、お配りした用紙に1番から5番まで順位をつけていただき、それを集計します。その総計を参考にしながら、1冊ずつご意見を伺っていきたいと思います。
出久根 順位というのは難しい。
市川 最終的に自分の好みですからね。
出久根 自分の好みで、お客さんに先に勧めるものから、というくらいの気持ちで順位をつけますね。
(5名それぞれに記名で投票)
――さて、皆さんに投票いただいたものを編集部で集計したのですが、これは予想もしない大激戦です。
鈴木 皆さんが「これが1番だ」「これはつまらん」と意見が一致したら、まずいんじゃないかと思っていたら、どうやらそうではないみたいですね。
出久根 評論家ではなく、本屋が選ぶところがミソですよ。この5冊を読んだ限りでは、本屋の意見はバラバラだろうと思っていました。
菊池 私もそう思いました。一読した後、「すんなりと決まらないと思うけど、該当作なしという立場で、出席してもいいでしょうか」と編集長に相談していたくらい(笑)。
――おっしゃる通り、非常に面白い結果になりました。仮に1位を5点、2位を4点、3位を3点として点数化しますと、もっとも点数が高いのは、志水辰夫さんの『夜去り川』でした。けれどこの作品に1位をつけた方は、ひとりもいないんです。ほかの4作品は、これに比べると合計点数は低いんですが、どなたかがご自身のベストに挙げていらっしゃる。あまりに接戦ですから、著者の50音順で作品ごとに、均等に話し合っていきましょう。
(続きはオール讀物2011年12月号でお読みになれます)
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