
――ドラマの放映から11年経って、今度は「御宿かわせみ」の舞台のお話が来た時の感想をお聞かせください。
高島 「また、声を掛けていただけるんですか」というのが正直な気持ちでしたね。実は、ドラマ化の後にも舞台のお声は掛けていただいたんです。そのときに「ドラマでできるんだから、舞台でもできるでしょう」と橋之助さんも簡単におっしゃっていましたが、その頃のわたしは、まだ舞台の経験に乏しかったので、「とても、怖くてできませんよ……」とお断りしたんです。その後は、明治座さんとは縁がありまして、『女たちの忠臣蔵』や『春日局』と、この11年の間に、とてもいい作品に関わらせていただいて、少しは成長できたかなと……思っていたところに、また、平岩先生の作品で、声を掛けていただけて、本当にとてもうれしかったですね。11年頑張り続けて来て、るいの魅力を引き出せる一番よいタイミングで舞台の声を掛けていただいたと、自分自身で確信しています。
――橋之助さんとのコンビは、とても久しぶりとは思えないほど息がぴったりですね。
高島 だって橋之助さん、ぜんぜん変らないんですもん(笑)。私たちは、こうやって橋之助さんと共演させていただいたり、「鬼平犯科帳」で(中村)吉右衛門さんとご一緒させていただいたりするくらいで、普段は歌舞伎の世界をあまり知りません。橋之助さんも、10月に芝翫を襲名されるということで、もし、「前より近寄りがたくなったりしていたらどうしよう」と内心、思っていたのですが、以前と変わらない明るい橋之助さんで、ほっとしています(笑)。橋之助さんって、現場ではとにかく積極的に人と関わっていくんですよ。自分がおすすめのものがあると、買うまでずっと勧められる(笑)。あと、セリフ覚えがほんとうにいい。ドラマのときは、事件の説明はほとんど東吾がしてましたから、東吾のセリフが長かったんですが、毎晩あれだけ飲みに行って、いつどこで覚えているのか知らないですが、ほとんどNGがなかった(笑)。そういうオンオフの切り替えが上手な印象があって、私は切り替えが下手なので、羨ましかったですね。それに、現場でも、惜しみなく自分の経験を教えてくれる。私は身長が高いので、かつらをつけて下駄をはくと、腰を落として暖簾をくぐるというのが難しく、るいのたたずまいを出すのに、一生懸命練習しましたね。そういう所作も教えていただき、ご一緒して得るものが多かったので、今回の舞台でも頼り切りたいです。
――高島さんは、平岩作品とはゆかりが深いですが、もともと「かわせみ」ファンだったそうですね。
高島 はい。以前からずっと読んでました。もともと時代劇や時代小説が好きだったんですよ。父が厳しくて、家でも大河ドラマと時代劇しか見てなかったんですが、自分も一緒になって見てました。その影響で社会人になってから本を読むようになると、山本周五郎とか、時代小説ばかり選んでいました。デビューした直後も、そうそう仕事があるわけでなく暇ですから、事務所からも「本を読みなさい」と言われて、さらに読書に精を出しましたね(笑)。そのときに、「かわせみ」とか「はやぶさ新八」に出会いました。「かわせみ」の最初の話の「初春の客」を読んだときはとても衝撃的でしたね。黒人が海を泳いでいく。でも、実際に、そういう黒人がいたんですね。そういう時代背景もしっかり書かれているんです。
――実は、今号で「御宿かわせみ」は、300話を迎えるんですよ。
高島 そうですか。それはすごいですね! たぶん、「かわせみ」の魅力は、作品とともに歩んでいくことで、読者も作品の世界観とともに成長してゆけるところにあるのかなと思います。たとえば、ジャニーズのファンであれば、マッチのファンになると、マッチが成長すると、ずっとファンも一緒についていくように、「かわせみ」では、読者もるいさんと一緒に歳を取っていく。物語が同時進行していると、取り残されないので、とても楽なんですよ。たとえば、「サザエさん」みたいに、歳を取らない作品もありますけど、ワカメちゃんのつもりで見ていたら、ふと、波平さんのほうが自分に歳が近いことに気づいて、「波平さんは歳を取りすぎじゃないか」と思ったり、作品に対する視点が変わるんですね。でも、「新・御宿かわせみ」であれば、一緒に明治の時代を感じることが出来る。それが「かわせみ」の持っている魅力ですね。
合本 御宿かわせみ(一)~(三十四)
発売日:2014年11月21日
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『猪牙の娘 柳橋の桜(一)』佐伯泰英・著
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