ストーリーもとてもリアリスティックです。敵の陰謀の目的も「世界征服」みたいなものではなく、英国情報部を混乱させ、ボンドを殺害するというものなのですから。あともうひとつ、オリエント急行に乗って旅をするシークエンスがありますが、そこでアクションも含めて素晴らしいシーンがいくつも登場します。
――『007 白紙委任状』に映画化の具体的な話はまだないと聞いていますが。
D いまのところはありません。新しいボンド映画の企画は進んでいますけれど、これは別です。
――あなたが映画のプロデューサーだったら、今回の作品のボンド役には誰をキャスティングします?
D 個人的にはダニエル・クレイグが気に入っています。原作のボンドにルックスがいちばん近いのはショーン・コネリーでしょうが、キャラクターとしていちばん近いのはダニエル・クレイグだと思います。オーストラリアの俳優ガイ・ピアースでもいいですね。
――さきほどおっしゃったように『007 白紙委任状』はとてもリアルですが、古き良き冒険スリラーの痛快さが横溢しているようにも思います。
D それは007というキャラクターのおかげですね。この作品を書いているあいだ、自分がジェームズ・ボンドの小説を読んでいた頃を思い出していました。ここにあるのは「異世界」なんですね。スリラーの本来の楽しさ、冒険小説の良き時代、世の中がこれほどややこしくなく、清く正しいストーリーテリングにもっと近づける世界。そこに足を踏み入れる、というのが本書の体験だと思います。
すべて読者のために
――昨年11月に東京にいらっしゃいましたね。
D 心の底からうれしく、楽しい旅でした。ぜひとももう一度行きたいと思っています。とりわけ感動したのは、日本にすばらしいファンがたくさんいたことです。そして、もっと大きな意味でいえば、日本のひとたちが本というものを非常に愛していることにも感動しました。
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