しまお うちのおばあさんは、おじいさん(島尾敏雄)と仲良し夫婦ってことにはなっていたんですけど、おじいさんはおじいさんで我が強くて、父が言うには「おばあさんが作家として成長するのをすごく恐れていた」って。嫉妬心が強い人だったみたいです。
小川 昔は特にそうでしょうね。
しまお その突き進みすぎた才能を伸ばすというか、いい方向に持っていってあげる人がいたら幸せだったのかな、とは思いますけどね。結局、うちのおじいさんが浮気しておばあさんは気がふれちゃう、みたいなことが起きたので。
小川 おばあさまは好きだったんですね、おじいさまのこと。
しまお 思い込みが激しいから、自分でも「好きなんだ。好きなんだ」って思っちゃったのかもしれない。
小川 突き進みやすいのは才能の一つですけどね。
しまお お母さまの場合、娘さんがこういう風に冷静に自分のことを見てくれているのはすごい貴重なことだと思いますけどね。
小川 本人はそれを全然分かってない(笑)。私が男の子だったらまた違ったかなあ、と考えたりもしたんですけど。
しまお 雅代さんはあんまり女々しくなく、起きたことに向かい合ってますよね。逃げる人もいるよなあ、と思ったんですよ。女友達にベッタリ頼ったり、男の人を渡り歩くとか。
小川 そういうのができないんです、不器用だから。
しまお 読んでいると、それで救われたんじゃないかな、という気はすごくしました。解決方法が甘えてなかったのがよかったんじゃないかって。
小川 なるほどー。そういう風には考えてませんでした。
しまお けっこう大変な場面でも、わりと冷静に犬のことまで考えていたりして、そこが面白かった。
小川 しまおさんもそういうところありますよね? 冷静な。
しまお でも、自分がそういう状況になったらどうだろう、とは思いますけどね。そこまで見ていられるかなぁ? 特に、お母さまも含めてみんないなくなって、なにも食べものがなくなって飢えてしまうような時は……。