- 2018.04.13
- 書評
野球を通して描かれる女性たちのドラマ。 不覚にも涙してしまった「輝き」の季節。
文:和田 豊 (阪神タイガース・球団本部付テクニカルアドバイザー)
『輝跡』(柴田よしき 著)
出典 : #文春文庫
ジャンル :
#エンタメ・ミステリ
近年、野球人口が減っている。私達が子供の頃はたいした娯楽もなく、家にテレビは一台しかなくて、そのチャンネル権はたいてい一家の主である父親が持っていた時代だ。知らず知らずのうちにプロ野球ファンになっていた。近所の子供達が集まれば野球をして、王選手だ、長嶋選手だと真似をしていた。今はそんな時代ではないかもしれない。娯楽は多様化し、サッカー人気に押され気味であることは否めない。が、しかし各球団の企業努力によってプロ野球ファンは定着している。観客をあれだけ集められるスポーツはなかなかないのではないか。なぜだろう。決められたルールのなかで、小さな硬球を使うボールゲームのどこにそんな魅力があるのだろう。
そうだ。皆「輝跡」を見たいのだ。スポットライトに当たってグラウンドにいる選手達。スポットライトに照らされて輝いている、その時間は限られている。その僅かな時間、限られた時間のなかで輝く最高の夢の舞台を観たいのではないだろうか。
最近でこそ、トライアウトを受ける選手やその家族などがテレビ番組で取り上げられることがあるが、今までだってスポットライトの下から離れてしまったり、スポットライトに一度も当たることなく去っていった選手や家族が無数のドラマを作っていたのだ。この作品には、北澤宏太と彼に関わるプロ野球選手達、その周囲にいる女性達のドラマが描かれている。この本は、プロ野球選手であってもなくても、男性でも女性でも、野球が好きでも、そうでなくても、読者がそれぞれの立場に立って共感できると思う。プロ野球を通して描かれる人間模様。野球界をよく知る柴田さんならではの作品である。
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