- 2018.04.13
- 書評
野球を通して描かれる女性たちのドラマ。 不覚にも涙してしまった「輝き」の季節。
文:和田 豊 (阪神タイガース・球団本部付テクニカルアドバイザー)
『輝跡』(柴田よしき 著)
出典 : #文春文庫
ジャンル :
#エンタメ・ミステリ
この作品の中で私が一番心に残ったのは、北澤とマリアの場面だ。二人はお互いの事を知らない。しかし会ってしばらくするとお互いが神に選ばれた存在であることに気付く。「神に選ばれた人間は、その神に常に虐められるのよ」。そうだったのか。選ばれた人間は、常に神に試されるということなのだろうか。北澤の言葉だ。「球を投げる。でも、そうなんだ。投げれば投げるだけ、虐められる。痛くて、腫れて、もう投げたくない、と泣きたくなる。だけど投げるしかないから、また投げる」自分が苦しかった頃を思い出す。
毎朝ベッドのなかで確かめた。「今日はどうなんだ。自分の体は」と問うのが日課だった。「肘は? 肩は? 膝は?」少しだけ体を動かしてみる。苦しかった選手時代。どこか怪我をしている時は勿論、怪我をしていない時でも同じだ。まさか寝違えていないだろうか。昨日ちょっとひねった足首は今日は動くのか。そうなんだ。選ばれたんだ。苦しくたって当たり前だったのだ。
そしてもう一つ、野球選手の高橋が選手としての引き際に語った「勝負する人間として燃え尽きた」しかし「(野球にたいして情熱を)死ぬまで持ち続けます」という言葉に感動した。そんな高橋を追い続けていた慶(けい)が、自分の人生を諦めることをやめて、頑張って生きる決心をした場面。ここでは不覚にも涙してしまった。他人の為に、こんな生き方の選択をする人がいるものなのか、と。
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『赤毛のアン論』松本侑子・著
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