書評

あんこ好きに悪い人なし! 和菓子は謎解き小説に合う「食べる暗号」

文: 姜 尚美 (ライター)

『晴れの日には』(田牧大和 著)

『晴れの日には』(田牧大和 著)

 松沢家に柏餅を注文された際、予算の関係なのだろうか、晴太郎は唐物の三盆白を使うところを黒砂糖に替えて味噌餡を作る。そして、その味噌餡を柏葉にちょこんと載せ、佐菜の娘・さちに、小さな人差し指で掬い取って食べさせる。

 抜き打ちテストに弱い私は、暗号も駆け引きもない、このあんこのつまみ食いのシーンが好きだ。

 あんこといえば、本作には思わず心を奪われる創作餡がたくさん出てくる。

 変わり柏餅の一案として晴太郎が思い浮かべる、桜餡。初巻にも登場する「百代桜」に使われた餡だ。梅干しの紫蘇を刻んで合わせた白餡に、桜葉を閉じ込めた琥珀の賽の目切りを混ぜ込むという組み合わせ。寒天が溶けるので蒸し菓子の柏餅には厳しかったけれど、餅自体にはよく合うと思う。白玉団子にぽってり添えて、一風変わった桜あんみつのようにして食べてみたい。

 仙台生まれの佐菜が晴太郎に教えた、枝豆(はじきまめ)のずんだ餡。若苗色がぼやけると佐菜は諭したけれど、晴太郎が思いついた白餡とずんだ餡の組み合わせも悪くないと思う。

 金柑の砂糖煮を刻んで混ぜた淡黄蘗(うすきはだ)の白餡を載せる「子戴(こいただき)」にも興味津々だ。柑橘風味の餡を草餅と合わせるなんて、食べた時に鼻に抜ける香りはどんなだろう。

晴れの日には田牧大和

定価:本体760円+税発売日:2018年07月10日


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