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構想12年の力作、冲方丁長篇ミステリー『十二人の死にたい子どもたち』に込めた想いとは──後編

構想12年の力作、冲方丁長篇ミステリー『十二人の死にたい子どもたち』に込めた想いとは──後編

「別冊文藝春秋」編集部

2019年1月、映画化決定!


ジャンル : #エンタメ・ミステリ

『十二人の死にたい子どもたち』 (冲方 丁 著)★2018年10月文庫化

――時代ものを書くときに身についたとは意外です。

冲方 時代ものって、結果はわかっているんです。歴史だから。でも、この人はなんでこんなことしたんだろうって、それがわからない。史料も散逸してしまっているし、手に入ったものから事情や動機を推察していくしかない。その過程で、謎解きって、謎の設定自体はシンプルじゃないとダメだなとつくづく思いました。謎はシンプルだけど、解いていく過程にはドラマがあって、でも結論はまたシンプルで。

 あと、こういう解釈なら成り立つなと思った矢先に新史料発見、というのも時代ものではよくあって。同じように、今回も好き勝手に十二人を走り回らせていたら、予期しないところに予期しない子が居たりして、あ、やばい、みたいな(笑)。それをちゃんと受け入れて物語の流れに乗せていく、そういう書き方が出来るようになったことで、プロットでがちがちに縛らなくてもいいようになった。計算だけで謎を作っていない分、まだ他にも偶然があるかもしれないという緊張感を常に読者に与え続けられるし、僕にとってもそれが書くモチベーションになりました。

 そもそも、次に誰がしゃべり出すかもあまり決めずに書いていたんです。そしたら結果的に男子が前半をつかさどって、後半になって場が整ってきたところで満を持して女子が出てきて、しかも支配していくという……。男子篇はみんな意外に言うことがシンプルで、おい、男子、おまえらけっこう協調性あるなって思わず突っ込みたくなったぐらい。一方、女子パートでは、謎解き云々より、誰がこの場を仕切るのかっていう、マウンティングが始まって(笑)。

 このシチュエーションて、本当にいろいろ遊べるんですよ。『十二人の怒れる男』がもし『十二人の怒れる陪審員』で、その場の半分が女性だったら? とか、いっそ『十二人の怒れるPTA』だったら? とか。集団の個性や属性を替えることで、起こるドラマの質が変わる。もっともプリミティブな子どもたちでやってみたいま、次はどんな人たちを集めて書こうかと、うずうずしています(笑)。

二〇一六年九月六日 文藝春秋にて

撮影:白澤正

十二人の死にたい子どもたち
冲方丁

定価:858円(税込)発売日:2018年10月06日

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