- 2018.11.29
- 書評
ツチヤ先生とタワシ
文:荒井泰子 (大人と子供のための読みきかせの会ピアニスト)
『そしてだれも信じなくなった』(土屋賢二 著)
出典 : #文春文庫
ジャンル :
#エンタメ・ミステリ
先生の驚異的な能力を発見したこの日から何日か何年か経ったある日、私は脳出血に倒れました。先生はエッセイの中で、私の病気の原因を「酒の飲み過ぎか、頭蓋骨の大きさに比べて脳が小さすぎるため」と、卓越した身体能力で分析してくださいました。私の妹が「なんだか救われるわ」と的外れな感想を述べる一方で、私はといえば、病気をした本人だからでしょうか、そんな風に書かれて、胸が苦しくなり涙が出てきました。こみ上げてくる笑いを抑え切れなかったのです。そして爆笑しながら後悔しました。もっと早く、病気の前にこのエッセイを読んでいたら病気にならなかったかもしれない、先生のご指摘を肝に銘じて酒量を減らす努力を……するのは無理だとしても、脳や頭蓋骨の大きさを調整して病気を避けられたかもしれない、人目を忍びながらもツチヤファンであることを公言して憚らないタワシとしたことが何故、ツチヤ本を買うのが恥ずかしいとかお金がもったいないなどという瑣末な真実に縛られてしまったのだろう、そうだ、これからは心を入れ替えて早め早めにツチヤ本を買おう! 売り切れたら大変だ、念のために、出版される前に財布を持って本屋に行こう、森博嗣さんの新刊が出たらすぐに。
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