オギリマさんが中学の水泳部の練習中に巨人の歴代選手名を唱えていたというほどの巨人ファンから鯉党に転じた経緯については、詳しく覚えておられないとのことですが、好きになったものは好き、という理由に勝る理由はないのかもしれません。私の場合は、故郷を飛び出て東京に進学し、大都会にてせいせいした気持ちで過ごしていましたが、しばらくして気がつけばカープはすっかり弱体化しており、万年Bクラスのお荷物球団だとか、球界再編とともに消滅だ、などと謗られて、あまりに悲しくなったのが里心のついた理由です。鬱陶しかったはずの父親の背中が、気づけば痩せ細り、小さく見えた。「好きになった」というより、「思わずにいられなくなった」というのが正確なところかもしれません。同じ頃から私も自ら選んだ映画の道で仕事をするようになり、思い通りにはいかない現実を痛感するばかりの毎日でした。根拠のない自信も、根拠のある努力も、片っ端からなぎ倒されてゆく。自らの力の無さに負け、世間の権力や金に負ける、育んだものは手からすり抜け、愛した人も、消えていなくなる。人生は勝ち負けではありませんが、仮に勝ち負けに例えるならば、当たり前にやっていれば負け越すのが普通だと私は思います。1カード・1勝2敗って、実は結構すごいことです。私の角度からみれば、カープの弱さと小ささはまるで自分を見るようで、そしてそれでも翌年の開幕にはケロリと応援し始めるファンのおめでたさもまた、懲りない自分の体に流れる抗えぬ血のように感じたのです。
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