特集

『Orga(ni)sm』キーワードをめぐるよもやま話 #2

文: サイモン辻本(辻本力),ガーファンクル(編集部)

文學界10月号 <阿部和重『Orga(ni)sm』を体験せよ>

『オーガ(ニ)ズム』(阿部和重 著)

<<#1よりつづく

スパイ映画と洗脳

 S そろそろ映画の話もしたいんだけど、何はさておきスパイ映画。イーサン・ハントジェイソン・ボーンジャック・ライアン……いろんなシークレット・エージェントが出てくる。

 G ジャック・ライアン懐かしいな。原作者トム・クランシーの小説も流行ったよね。小説内に出てくる映画『今そこにある危機』は、ハリソン・フォードがCIA情報アナリストのライアン役を演じてた。

 S スパイ映画を代表する「007」シリーズへの言及もあるけど、思ったより少ないのは、やっぱり「アメリカ」がテーマとしてあるからなのか。

 G たぶんそうなんじゃないかな。近年の大作・大ヒット作が多いけど、そういうのに混じってアルフレッド・ヒッチコックの『汚名』とかも。

 S FBIエージェントがナチの残党を追いかける話ね。マイナーなところでは、スパイものじゃないけど『黄金のランデブー』なんて映画も出てきた。これは未見。

『黄金のランデブー』
アシュレー・ラザルス監督
(スティングレイ)

 G 船に時限式の核爆弾が仕掛けられる話っぽいね。Wikiによればアメリカでは劇場公開されず、後年編集の異なる『Nuclear Terror』版がテレビ放送されたらしい。

 S まさに核の脅威だ。アマゾン見たけどDVDもプレミア付いてるね。高! とまあ、いろいろあるけど、まずは『ミッション:インポッシブル』かな。トム・クルーズ扮する極秘諜報部隊IMF(=Impossible Mission Force。不可能作戦部隊)所属の凄腕スパイ、イーサン・ハントが活躍する人気シリーズ。

 G 阿部さんはトムクル好きを公言してるからね。登場回数もダントツ。

 S あと、『ボーン・アイデンティティー』から始まる「ボーン」シリーズもけっこう出てくる。マット・デイモン演じる記憶を失くしたCIAエージェント、ジェイソン・ボーンが、追われながら「自分は誰か」を探っていく話。

『ボーン・アイデンティティー』
ダグ・リーマン監督
(ジェネオン・ユニバーサル)

 G ボーンは、CIAの洗脳プログラムによって暗殺者に仕立て上げられたって過去があって。

 S 「洗脳」や「記憶」って『Orga(ni)sm』的にも重要なテーマだから、チョイスされるのはよく分かる。主人公・阿部和重が、自分の巻き込まれている状況を表現する時に、ついついこういうド派手なスパイ映画ばかり連想してしまうというのが面白い。

 G それによって、日常とのギャップが伝わってくるというのもあるしね。あと洗脳なら、六二年のアメリカ映画『影なき狙撃者』も重要かも。兵士を洗脳して、無意識下で暗殺者に仕立てるって話。

 S 人をコントロールするという意味で、アヤメメソッドを連想させるね。

 G 五〇~六〇年代に、CIAが密かに実施してた洗脳実験「MKウルトラ計画」っていうのが実際にあって、被験者にLSD与えて操り人形状態にしてたとか。そういう現実が背景にある映画。

文學界 10月号

2019年10月号 / 9月6日発売
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オーガ(ニ)ズム阿部和重

定価:本体2,400円+税発売日:2019年09月26日


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