逢坂 そういえば、あのさつま芋は由緒ある芋なんですか?(さつま芋の天ぷらは近藤名物の一つ。円筒状に切ったさつま芋に薄衣をつけて揚げ、表面がサクッ、中は石焼き芋のようにホクホク)
近藤 あれは千葉県香取郡の紅あずま、という芋です。僕があれを最初に考えたとき、イメージが焼き芋だった。それで、どこの芋がいいのかずいぶん調べました。
逢坂 揚げているのをじっくり拝見しましたけど、たっぷり三十分くらいはかかってますよね。二つの天ぷら鍋の中を行ったり来たり、最後は寝転がしたりもして。前にも教えてもらったけど、芋の天ぷらって「下半身浴」なんですよね。素材を全部ズブッと油の中に入れない。
近藤 全部入れると温度が下がりすぎちゃうからね。芋はしっかり熱を通さないと香ばしさが出ないからああいう揚げ方になる。でも玉ねぎの場合は、中が二分(にぶ)、生になるように揚げます。なぜかというと玉ねぎはたくさん熱を通すとただ甘いだけになってしまう。砂糖の中に砂糖を入れても別段、うまくないでしょう。でも砂糖に醬油を入れるとうまくなりますよね。だから玉ねぎも辛みのある部分を残すと、食べたときにうまみが引き立つんです。アスパラにしても中に一本ゴムが通ったように、生の部分を残す。余熱でもってどう熱を通すかが勝負なんです。
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