いとうの作品を読むたびに、いとうががむしゃらにまっすぐに“人”に向かっていこうとしている、その迫力を感じるのだ。それをダイナミズムと呼ぶのは決して、的外れではないと思うのだが。
書くことで繊細にダイナミックに、“人”に迫り、世界に迫ろうとする作家はそう多くないと思う。人間の内を繊細に探ろうとする書き手も、躍動的に大胆に作品世界を展開させていく作家も多くいる。彼女ら彼たちは、優れた作品を次々に生み出してもいる。しかし、ゆっくりとどこか躊躇いがちに“人”に迫りながら、物語を大きく飛翔させることのできる者はそう多くない気がする。
いとうは、数少ないそんな作家の内の一人だ。
あくまで、わたし個人の感覚でしかないけれど、頷いてくれる人はいると思う。
そして、もう一つ。いとうの守備範囲の広さには驚嘆する。するしかない。
幼年物から『車夫』のようなYAというか一般書に近い作品まで自在に書き上げる。言わば、「内野のどこを任せても大丈夫」というプレーヤーだろう。どんなイレギュラーバウンドの球も必ず身体の前で止め、捉える。柔と剛を併せ持つが故のプレーだ。
しかも、多作だ。実に精力的に書き、読み、さらに書く。
今、書かなければいつ書くのだ。書くことを後回しにしてまでやるべきことはない。
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