- 2019.11.25
- 書評
「もう少しだけ、頑張ってみよう」――そんな力を与えてくれる、お仕事小説
文:塩田春香 (会社員・HONZレビュアー)
『科学オタがマイナスイオンの部署に異動しました』(朱野帰子 著)
出典 : #文春文庫
ジャンル :
#エンタメ・ミステリ
『海に降る』『駅物語』『わたし、定時で帰ります。』など、お仕事小説の名手・朱野帰子さんの作品には、他人事的な「がんばれ!」ではなく、読み手に「一緒にもう少しだけ、がんばってみようよ」と、そっと背中を押してくれるあたたかさがあります。きっとご自身も社会で苦しんだ経験があり、それが作品に生きているのでしょう。そんな朱野さんにも大好きなものがあると聞いたことがあります。それは――深海探査!
朱野さんと私は自然科学好き仲間の集まりで知り合いました。私は自然や生き物が好きで、その保全にかかわる仕事をしたいと思ったばっかりに人生を迷走させることになってしまったのですが、それでも困難にぶつかるたびに自然のなかに身を置くことで心を落ち着かせ、辛うじて今までやってこられたような気がしています。
深海や深海探査について語るときの朱野さんの好奇心に満ちた表情は、ああ、ほんとうに大好きなんだなと見ていて嬉しくなるほど素敵です。本書の読者の皆さんにも、生き生きと素敵な表情で語れる大切なものがあるといいな、好きなものを大事にしながら働けているといいな、と、この解説を書くために本書を読み返しながら、願わずにはいられませんでした。
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