
最後に。こんな物語を描く白石氏は、とても怖い人なのでは、という読者の方に伝えたい。最近の白石さんの描く物語には、とても世話好きな人のよい中年男性がしばしば登場するが、あれは白石氏ご自身の姿にとても近い。
そんな白石氏の面倒見の良さは本書の彼にも見られる。彼は壊れているように見えるけれど、壊れてなんかいない。彼が壊れている部分を見せるのは、世の中で良し、とされている耳触りのいい価値観、お行儀のいい秩序、公平だと巧妙に思わせる体制に向かいあったときだ。そこに深い思索があるのか、と幾度でも彼は問いかけている。彼はこう絶叫しているようにも思える。
壊れてみてもいいじゃないか。壊れていない人などいないのだから。
自分の、誰かの、その壊れている部分を、認め、受け入れ、恥じないことからしか、私たちは何も始めることができないだろう。本書を読むたび、そのことを何度でも思い出す。
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