
白石一文という作家と私との縁というものをまず書いておかねばならないと思う。
私が小説家としてデビューするきっかけとなったのは、新潮社の『女による女のためのR-18文学賞』なのだが、「大賞をとりました」という電話をいただく直前、私は下北沢の三省堂書店の小説売り場で白石氏の『この胸に深々と突き刺さる矢を抜け』の単行本を手にしていた。白石さんの新刊が出たんだ。しかも上下巻の単行本。早く文庫にならないだろうか(その頃はフリーのライターをしており、しかも夫と別居するかしないかという問題でもめている時期で、経済的にも時間的にももちろん精神的にも余裕がなかった)。そんなことをぼんやり思っていたとき、携帯電話が鳴り、私は慌てて本を置き、新潮社の担当者からの電話をとったのだった。
この人の描く物語、この物語を描くこの人とは、何か縁を感じる、というのは、読者の一方的な思い込みから始まるものだと思うけれど、そもそも私に小説を書きたい、書かなければ、と思わせてくれたのが、本書『僕のなかの壊れていない部分』だった。
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