女で生まれただけで理不尽で不利な世の中を生きるために
けれど一方で、里奈の語る生い立ちや物語に、僕自身の価値観そのものも、大きく覆された。
「耐え難い居場所」を捨てて自力で生きることを選んだ少女らや、貧困状態から抜け出すためにセックスワークを選ぶ女性について、かつての僕はそれが「不適切な自助努力」であり、その不適切さゆえに彼女らの困窮状態が不可視化されたり公的な支援とつながらないことに大きな問題を感じ、ルポ活動を通じて報じてきた。
「不適切」と感じていたのは、もちろん法的問題、倫理問題、防疫的問題といった観点もあるが、僕自身の中に「女性が金銭目的で男の前で裸になり抱かれることは、その女性の尊厳や自尊心を捨てることだ」という認識があったからに思う。
連綿と解消されないジェンダーギャップの中、その身を切り売りする少女らと多く接しながらも「女性の尊厳を男が消費するような腐れた世の中を是正することが最優先」と思ってきた時点で、僕はかつて民権運動や売春防止法の成立運動から立ち上がって来たウーマンリブとセックスワーカーやナイトワーカーとの狭間にある分断の中に、立ち位置を決めかねていたのだろう。
だが里奈やその仲間たちは平然と言い切る。
「金で男に抱かれることとあたしの自尊心は、関係ない」
「金で買われてんじゃなくて、売ってやってるんだけど?」
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