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前代未聞の1万字解説! 「苛烈で、繊細で、孤独で、その瞬間、一人だけ共にいた」

前代未聞の1万字解説! 「苛烈で、繊細で、孤独で、その瞬間、一人だけ共にいた」

文:小林直己 (EXILE/三代目J SOUL BROTHERS)

『主君 井伊の赤鬼・直政伝』(高殿 円 著)

出典 : #文春文庫
ジャンル : #歴史・時代小説

『主君 井伊の赤鬼・直政伝』(高殿 円 著)

 現代社会はデジタル上でのネットワークが広がり、人と人との結びつきが希薄になり、人の目よりも画面を見て過ごす時間が多くなったと言われる。それも事実だが、天下泰平の世を迎える前の動乱期を駆け抜けた二人の人生は、令和の世を生きる僕たちにも通底していると思わざるを得ない。

 日本の歴史の中でも、誰もが知っている三英傑、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康。その家康に小姓として仕えることから始まった守勝の目線によりこの物語『主君』は始まる。自分の生まれる場所は誰も選べない。特に、物語の時代背景である戦国時代は、家がすべてのものに優先され、縁故関係において力関係を変化させ、人の弱みを握り、それぞれの人生を変えていく。そんな運命を背負い、その運命の重さも重々承知している守勝が絞り出すように語った言葉が印象に残る。

主君とは与えられるものではない。禄をもらう相手は臣下が決めるのだ。

 これは実に正しい。社会の中で生きていく僕らは、何らかの流れに組み込まれていくものだが、生まれる場所以外は自らが選択する。身命を賭して選ぶ決断こそが相手を動かし、それゆえ自らも人生を動かしていく。そこで初めて人は、天命というものを意識するのではないか。

文春文庫
主君
井伊の赤鬼・直政伝
高殿円

定価:935円(税込)発売日:2019年12月05日

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