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前代未聞の1万字解説! 「苛烈で、繊細で、孤独で、その瞬間、一人だけ共にいた」

前代未聞の1万字解説! 「苛烈で、繊細で、孤独で、その瞬間、一人だけ共にいた」

文:小林直己 (EXILE/三代目J SOUL BROTHERS)

『主君 井伊の赤鬼・直政伝』(高殿 円 著)

出典 : #文春文庫
ジャンル : #歴史・時代小説

『主君 井伊の赤鬼・直政伝』(高殿 円 著)

 対して、木俣守勝を辿っていくと、林信篤が撰した墓碑によれば、楠木正成の孫である楠木正勝の子孫が伊勢(三重県)に移住をして、木俣姓を名乗ったのが木俣氏の興りであるとされる。そのことは楠木氏嫡流である伊勢楠木氏の家系図の側にも記載されている。天文年間(一五三二~一五五五年)、守勝の父である守時の代において、三河に移住して徳川家康に仕えた。その後、守勝は十六歳で元服をするが、家族との諍いにより出奔し明智光秀に仕え、戦功により五十石を与えられ織田信長にも謁見し、のちに徳川方に復帰、一五八二年の伊賀越えにて地理に明るい守勝自身が家康の三河国帰還を助けた。その時に、小姓として共に力を発揮したのが直政である。

 本書『主君』では、直政と守勝が主君と家臣であり、その関係と成熟が描かれながらも、同時に、家康と直政、家康と守勝という、家康を主君とした二組の関係も描かれている。それは、対比として直政と守勝の関係を浮き彫りにしながらも、大きな視点で見れば、戦国時代において結ばれた各武将たちの主従関係を通して、現代を生きる我々に大切なことを問うている気がしてならない。「仕える」とは何なのか、「誰に仕えている」のか。冒頭で守勝が家康から浴びせられた言葉の意味を、結末にて再度問われた時、その意味の大きさを読者は感じる仕掛けになっている。

 忠義とは何か。お前は誰に仕えているのか。そして、天命とは。

 本書から投げかけられたこの問いに対し、現代を生きる我々と、僕自身のバックグラウンドであるEXILEを比較対象とし、答えを模索していきたい。

文春文庫
主君
井伊の赤鬼・直政伝
高殿円

定価:935円(税込)発売日:2019年12月05日

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