丸和 密猟者を?
秀明 はい。
丸和 あなたが?
秀明 そうですね。というか、僕と草太で。(寝ている草太に)おい!
草太 (頬杖をついて寝ていて)ん?
丸和 おはよう。どう? 睡眠学習の成果は。
草太 あー……いいですね。
丸和 (無視して秀明とルイに)説明して。わかるように説明して。
秀明、ルイ、同時に説明を始める。
丸和 どっちか!
秀明 (ルイに目配せして)あ、じゃあ俺が……まあ、そのカラス岩の登山道を下るところまでは追っていけたんですが、そこでいきなり振り向いて襲ってきたんですよ。いきなりだから、こっちも「うわ!」ってなって逃げたんですよ。普通襲ってこないから。しかもすごい叫ぶっていうか、な? 動物みたいにヴエー!って。
草太 はい、びっくりしました。
丸和 ……で?
秀明 で、逃しました。
丸和 びっくりしました。で、逃しました。以上。そんな報告ある?
秀明 すみません。
草太 すみません。
丸和 いい? 密猟者を取り逃がした。これすなわち屈辱。真正面から受け止めて、屈辱を。そうじゃなきゃもういらないよ、こんな自警団! いる価値無いから。全員スコア減点。
丸和以外の全員、ヌルっと落胆した反応をする。
丸和 落ち込むならもっとガツンといけよ! ちょっと! 本当に思い出して? どうしてレアゲノムの密猟をこんなに取り締まってるか。レアゲノムが自由に発掘されたらどうなっちゃうの? はい、草太!
草太 ゲノム編集しまくって……人間兵器を大量に作る。
丸和 まあそれもある。他には?
草太 ……わかりません。
丸和 奪い合いでたくさんの人が死ぬ。手っ取り早く言えば、レアゲノムは金塊に等しい。お金。ドラッグと同じ。これ何度も言った! スコア減点!
草太 いや! あの、じゃあ、俺、発掘のほうに回ります。
丸和 残念。そっちは技能実習生たちでいっぱい。空きはないわね。
草太 そこをなんとか……。
丸和 レート低いよ。三分の一しかスコアもらえないし。
この続きは、「文學界」1月号に全文掲載されています。
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