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実験としての批評──村上春樹、中上健次、柄谷行人 <講演 「近代文学の終り」再考>

実験としての批評──村上春樹、中上健次、柄谷行人 <講演 「近代文学の終り」再考>

文:ジョ・ヨンイル

文學界3月号

出典 : #文學界

「文學界 3月号」(文藝春秋 編)

 しかしながら日本で韓国文学が注目されたのは、今回が初めてではありません。たとえば一九九四年に翻訳された馬光洙(マグァンス)の『楽しいサラ』(熊谷明泰訳、テレビ朝日)も『82年生まれ、キム・ジヨン』と同じくらい売れたと聞いています。もちろん今の基準で見れば、両作品は性格が異なる。しかし儒教文化の厳格主義ないし家父長制を批判しているという点で、共通する部分もあります。

 ともかく馬光洙は同作品で社会的に指弾され、「淫乱文書製造」で法的に拘束されさえします(一九九二年)。それ以後後遺症に苦しみ、自殺でその生涯を閉じます(二〇一七年)。同じ年に『キム・ジヨン』の著者はマスコミや出版界はもちろんのこと、政界(国会と大統領府)でも大歓迎され、ベストセラー作家になります。五一年生まれの作家と、七八年生まれの作家の間に存在する約三〇年という歳月の変化は、六八年生まれのサラと八二年生まれのキム・ジヨンの間にもあるだろうと思われます。

 ともかく韓国の文学批評家として自国の文学が隣国で歓迎されるのは喜ぶべきことです。ところが交流というものは目に見える成果だけでは評価できないものです。しかしともかく韓国の出版界やマスコミはいま多少鼓舞されているようです。せっかちな人たちは日本での「K―文学」の人気をBTS(防弾少年団)の世界的成功(※1)と比べて韓流の復活とまで言っていますが、硬直した日韓関係を鑑みるとき、文学が「民間の次元で」和解の口火を切るきっかけとなるのも悪くないと思います。

文學界 3月号

2020年3月号 / 2月7日発売
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