特集

講演 交換様式と「マルクスその可能性の中心」

文: 柄谷行人

文學界12月号

「文學界 12月号」(文藝春秋 編)

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 今日私は「力と交換様式」について話します。「交換様式」について、すでに何度も書いて来ましたが、最初にそれを考えたのは、二〇世紀の末に、「群像」で『探究Ⅲ』というエッセイを連載していたときです。そのあと、これを全面的に書き直し、『トランスクリティーク――カントとマルクス』という題で出版しました。しかし、それは交換様式に関する考えとしてはまだ初期的なもので、それを練り直すために約一〇年を要しました。その成果が『世界史の構造』(二〇一〇年)です。さらに、それを補う仕事として、『哲学の起源』、『帝国の構造』のような仕事をしました。また、それに続いて、「Dの研究」という論文を書いた。それは一言でいえば、普遍宗教、あるいは「神の力」に関する考察です。それを交換様式Dから見るものです。

 ただ、それを書いている間に、「力」をDだけでなく、他の交換様式A・B・Cについても、もっと考えなければいけない、と思ったのです。そこで、「力と交換様式」と題して論文を書き始めました。この「力」については、これから説明していきますが、簡単にいうと、感覚的・物理的な力ではなく、人を強いるような観念的な力です。それは交換から来るものであり、どの交換から来るかによって、力も違ってきます。

文學界 12月号

2019年12月号 / 11月7日発売
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