- 2020.02.26
- 書評
事実に基づく驚愕の物語。なぜ日本で「重婚」状態の男性が生まれたか?
文:水谷 竹秀 (ノンフィクションライター)
『ダブルマリッジ』(橘 玲)
出典 : #文春文庫
ジャンル :
#エンタメ・ミステリ
私がフィリピンで出会った子供たちもまた、不法占拠地区(スクオッター)にひしめく掘っ立て小屋で暮らしていた。まともな教育を受けていないから日本語も英語もろくにできず、父親との面識すらない子もいる。取材が終わった後日、子供たちから電話が掛かってきて、「日本に行きたいけどどうすれば良い?」などと、藁にもすがる思いで尋ねられたこともあった。そうした子供たちは少なくとも、十万人はいると推計されていた。
元AKB48の秋元才加、ものまねタレントのざわちん、タレントのラブリ、現役力士で大関の高安晃……。今や日本社会で新日系フィリピン人が脚光を浴びるケースは枚挙にいとまがない。が、彼らは全体の一部に過ぎない。大半は前述の通り、フィリピンで典型的な貧困家庭に育ち、日陰に隠れるように生きている。そんな子供たちをテーマに、いつかはノンフィクションとして書けないだろうか。そうぼんやり考えていた矢先、橘玲氏から「フィリピンの新日系人を主人公にした小説を書けないかと考えています」というメールが届いた。橘氏とは、拙著『日本を捨てた男たち』(集英社)の文庫本解説を書いて頂いて以来だ。最初は正直、「やられた!」と思ったが、ノンフィクションとして取り上げるには取材に相当な時間がかかることが予想され、すぐに動き出せる状況でもなかった。それよりも、経済小説で著名なあの橘氏が描くのであれば、どんな世界を見せてくれるのだろうか。その気持ちのほうが膨らんでいった。
-
フィリピンで育てられた「新日系人」に着目した、日本人と国籍をめぐる物語
-
ファイナンス理論が導き出した「経済学的にもっとも正しい投資法」とは?
2024.10.29ためし読み -
世界を数学的に把握する者たち
2024.03.27ためし読み -
性の基本は女、オスは「寄生虫」
2020.06.22インタビュー・対談 -
ソロスから学んだこと
2014.05.28書評 -
臆病者が“賢明な投資家”になるには
2006.04.20書評
-
『赤毛のアン論』松本侑子・著
ただいまこちらの本をプレゼントしております。奮ってご応募ください。
応募期間 2024/11/20~2024/11/28 賞品 『赤毛のアン論』松本侑子・著 5名様 ※プレゼントの応募には、本の話メールマガジンの登録が必要です。