書評

事実に基づく驚愕の物語。なぜ日本で「重婚」状態の男性が生まれたか?

文: 水谷 竹秀 (ノンフィクションライター)

『ダブルマリッジ』(橘 玲)

『ダブルマリッジ』(橘 玲)

「新日系フィリピン人」と呼ばれる子供たちの増加が、社会問題になっていると知ったのは今から十年以上も前のことである。フィリピンに住んでいた当時の私は、在留邦人向けに発行している「日刊まにら新聞」で記者として働き、主に邦人事件の取材を担当した。具体的には、日本人観光客らが巻き込まれる強盗や窃盗の被害、在留邦人が殺害される事件、あるいは日本で逮捕される前に高飛びする国際逃亡犯の逮捕事案などだ。取材対象者は中高年の日本人男性が中心だったが、彼らの話を聞いていると、その文脈の中に必ずといっていいほど、若いフィリピンパブ嬢が登場するのである。彼らにとって、フィリピンとの接点を持つ入口が、夜の繁華街に建ち並ぶフィリピンパブなのだ。ところが、そこで出会った二人の間に産まれた子供たちの多くは、日本国籍を取得できず、日本の父親にも見捨てられていた。日本人の父親の血を引いているのだから、出生届を提出するなど適切な手続きを踏んでいれば、本来は日本国籍を取得できたはずだ。しかし、法の壁に阻まれた結果、低収入の母の手一つで育てられることになり、貧困の連鎖から抜け出せないでいた。

ダブルマリッジ橘玲

定価:本体840円+税発売日:2020年02月05日


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